地域創生を広範・総合的にサポート 地域創生Coデザイン研究所

木上 秀則 地域創生Coデザイン研究所代表取締役所長、
NTT西日本執行役員バリューデザイン部長(兼任)

地域住民が主役の地域創生を

社会課題をICTの力で解決していく「ソーシャルICTパイオニア」への変革を掲げ、西日本エリア30 府県でサービスを提供するNTT 西日本グループ。今年7月に設立した地域創生Coデザイン研究所は、以前から進めてきた地域活性化の取り組みをより広範かつトータルにサポートし、地域社会と住民のウェルビーイング向上に貢献することを目指すものだ。

「経済が成熟した日本では、経済成長だけを幸せの指標とし続けることが難しくなりました。まさに今、経済成長とは異なる次元の新たな解が求められていると感じます」と話すのは、同研究所の木上秀則所長。NTT西日本の経営企画部長時代から、既存の延長線上のサービスやソリューションを提供するだけでは、地域が直面している真の課題に十分に対応できていないと感じていたという。

「当社の営業エリアである西日本は、東日本エリアに比べ、多極分散がより際立っており、対応する30府県900超の自治体それぞれで顕在化している課題は、より深刻で多様です。各府県に配置する全30人の支店長が自治体や地元企業と接する中で、『社会構造的な課題に対する総合的な相談を受ける機会が急増している』と話すのを耳にしたことが当研究所設立の大きなきっかけとなりました」

そうした地域活性化への思いを実現すべく、2019年に始まったのが「地域活性化推進活動(通称:地域のビタミン活動)」だ。これは各支店長をプロジェクトオーナーとし、地域の本質的な課題を自分ゴトとして深掘りして考え、地域をよく知る地元のパートナーとともに持続可能な解決策を創出する活動である。地域事情に合わせてテーマを設定し、構想実現を価値共有できるパートナーと協力体制を構築しながら、各支店長が主体的かつ継続的に取り組んでいく。NTT西日本の支店長は地域を基盤として事業を展開する立場ゆえ、腰を据えて地域活性化に取り組む素地がある。地域に根を下ろして真に解くべき課題を探索し、持続可能な事業モデルを構築できる点は他に類を見ない。

造問題化した地域課題を変革するために「よそ者人材の活用」が重要と語られることもあるが、木上所長は「主役は地域住民。重層的な地域課題を、ピントをぶらすことなく解決に導くには、課題に直面する当事者自身が主体的に関わる仕組みが大切」と前置きし、こう続ける。

「プロジェクトの持続的な推進の肝は、『課題探求からシナリオ構想・実行計画策定・シナリオ検証・社会実装』のサイクルをうまく機能させることだと言われています。しかし、課題探求一つ取っても、行政視点や企業視点だけでなく真に住民や地元企業の視点で課題設定できているか、あるいは多数派だけでなく少数でも重要と思われる意見を持つ方々にも耳を傾けることは簡単ではありません。また、深刻化する多様な課題に対し、短期単発でなく長期的で重層的なシナリオを軸に、辛抱強く打ち手を揃えることも大切です。特定の検討フェーズやテーマごとに専門的で強みを持つ事業者の多くは、自社商材起点での活動に傾斜・限定する側面が強く、もっと総合的かつ面的に、また構想の実現に必要となる人材や活動資金などの事業リソースの提供も含めて、トータルサポートする担い手が必要だということが、ビタミン活動を通じて見えてきました」

地域のスマート化サービスを
NTT西日本グループとして提供

こうした状況を踏まえ、今年7月に同研究所を設立するとともに、同研究所だけでは充足できないケイパビリティを持つパートナーと連携し、互いに保有するリソースの相互補完やシナジー形成の仕組みとして「地域創生推進コンソーシアム」を設立、さらには、地域活性化実現に必要な「活動資金の優先確保」の3つをセットで行うに至った。

加えて、同研究所の特徴と言えるのが、NTT西日本グループが推進する社会課題解決のサービスプラットフォームである「Smart 10x戦略」と連動している点だ。同戦略では、NTT西日本グループ各社やパートナー企業と連携し、農業・林業や健康、教育や雇用などの社会課題を独自に10のカテゴリーに区分し、産業や社会システムのスマート化に資するICTサービス提供や事業化を目指し取り組んでいる。

「ビタミン活動で培った経験・知見をベースに、地域主体での持続的サイクルの実践をトータルでサポートすることと合わせ、最新のICT技術と地域に保有する資産や組織力・人材を強みとした具体的なサービスメニューを取り揃え、これらを相互に結び付けることで、実効性の高い解決策を提供できる体制を整えていきます」

現時点で、すでにいくつかの先行的なプロジェクトが始動しており、例えば、林業DXを軸とした自然資本循環型の地域活性化、地域への人材回帰や地元企業への就業定着支援、市街地活性化に向けた公共交通網構築や消費拡大などのテーマが進行中だ。このほかにも、Smart 10x戦略の検討プロセスや実証実験で連携した複数の地域での取り組みなども、同研究所がサポートし、他エリアへの水平展開モデルとして検討を進める予定だ。

コンソーシアムの知見を活かし
経済的価値と社会的価値を両立

同時に発足した「地域創生推進コンソーシアム」は、パソナグループ、 事業構想大学院大学 、NTT 社会情報研究所 、NTT西日本、地域創生Coデザイン研究所で構成されており、市民主体での課題解決メソッドや事業構想実現の経験値や知見、さらには事業立ち上げに必要な専門人材確保などを連携して行う考えだ。

図 「地域創生Coデザイン研究所」とコンソーシアムの役割

出典:地域創生Coデザイン研究所

 

3年前から始まったビタミン活動を振り返り、木上所長が強く感じるのは、企業は、その使命として、生産者余剰、すなわち事業利益を高めることは所与ではあるが、一方で、消費者余剰、つまりは地域住民の目線で感じる幸せや楽しみ、安心感(ウェルビーイング)といった社会的な利得を高めていく役割を、これまで以上にパラレルで求められており、このような価値観を社会全体で共有することが極めて重要だということだ。それゆえに、同研究所が、多くの地域住民の共感を得て、地域住民と協働でプロジェクトを進めていくことが叶うよう「コ・デザイン(Co-Design)」のメッセージを社名に取り込んだのだという。

目下の目標は、先行する複数プロジェクトを通じて、地域に貢献する成果を具体的に示すことだが、「将来的には、同研究所や同コンソーシアムで結集した知見・ノウハウを活用した地域課題解決モデルを確立し、多くの地域に水平展開していくとともに、活性化事業展開を通じて得られた様々なデジタルデータなどを活用し、未来社会への提言活動なども視野に入れていきたいと思います」と木上所長は意気込む。

生産者余剰と消費者余剰の両立・拡大を実現すべく、ICTを活用した同社の地域活性化の取り組みに期待が掛かる。

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株式会社地域創生Coデザイン研究所
戦略企画部
E-mail:codips-hp-ml@west.ntt.co.jp

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