小諸市の企業版ふるさと納税活用事例 地域発の新事業エコシステムとは

カクイチの企業版ふるさと納税を活用し、小諸市、カクイチ、事業構想大学院大学の産官学プロジェクトが始まった。企業・自治体が深く連携し、大学院の知見を活かし、地域課題の解決を目指す本プロジェクトの成果をトップに聞いた。

長野県東部の小諸市は、江戸時代は小諸藩の城下町、北國街道の宿場町として栄え、戦後は小諸城址懐古園などを擁する観光地として親しまれてきた。最近では「小諸版ウェルネス・シティ」を掲げ、地元住民(定住人口)と小諸市を訪問する観光客や移住者(交流人口・関係人口)から「選ばれるまち」を目指している。小諸市長の小泉俊博氏は、小諸市には2つのDNAがあると語る。(1)地元住民と旅人・移住者の交流による「化学反応」を町の発展につなげてきた伝統、(2)時代を先取りする「ファーストペンギン」として様々なチャレンジをしてきた伝統、この2つを小諸市のDNAとして挙げる。

小泉 俊博 小諸市長

コンパクトシティを目指すが、
人が来ても回遊しない

小諸市は「多極ネットワーク型コンパクトシティ」を目指し、「中心拠点」と「生活拠点」を形成し、それらを交通ネットワークで連結することを打ち出している。これまで市役所や病院、図書館を中心拠点として設置してきていたが、人が来ても回遊しないという課題を抱えていた。今年度も、2021年8月、「こもテラス」という複合型中心拠点誘導施設を開所。10月には再開発にともなって一時休業をしていたスーパーツルヤが再開。しかし、拠点整備だけでは、まちに元気や活力が生まれないことは分かっていた。

左:企業と連携し駅前に住民が更新できるマップを設置。まちの随所に工夫がある。
右:複合型中心拠点誘導施設こもテラス

そこで小諸市はカクイチに声をかけた。カクイチは、1886年、金物店として現在の長野県千曲市に創業。起業家精神を重視し、立て続けに新事業に取り組む老舗ベンチャー企業だ。同社は1960年に農業用スプレーホースに参入、1966年には農機具収納用ガレージの製造・販売を開始。2013年からはガレージの屋根に太陽光発電パネルを設置して売電事業にも乗り出すなど、新しい挑戦を続けている。同社の新規事業の特徴は、持続可能な開発目標(SDGs)と強く関連している点だ。

その新規事業の1つがMaaS(Mobility as a Service)事業。カクイチは昨年度、小諸市の隣に位置する東御市でMaaS事業の実証実験を行なっており、小諸市は人流を作るヒントが得られるのではないかと考え、カクイチにコンタクトを取った。通常MaaS事業は、交通の効率化がテーマにされるが、カクイチのMaaS事業は行動の活性化をテーマと掲げており、小諸市の抱える課題との親和性が高いと考えていた。

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