南予地域の9市町が連携し、住民主体のまちづくりで新たな絆を生む

2022年4月から12月にかけて、愛媛県西南部に位置する南予地域で開催中の「えひめ南予きずな博」。愛媛県と南予地域の9市町が連携し、同地域の新たな楽しみ方を全国に発信するプロジェクトだ。きずな博の総合プロデューサーである宮本倫明氏に、企画の仕掛けや地域活性化のビジョンを聞いた。

えひめ南予きずな博 総合プロデューサー 宮本 倫明氏

縁のある人々に、もっと深く
南予地域を知ってもらいたい

――「えひめ南予きずな博」のテーマである「つながるきずな、ひろがるいやし」に込められた想いについてお聞かせください。

南予地域(9市町)は、平成30年7月豪雨(西日本豪雨)によって甚大な被害を受けました。その後、被災地には全国から多くのボランティアの方に来ていただき、土砂崩れで斜面状になってしまったみかんの段々畑を元の状態に再生する作業の支援や、多くの物資・義援金を送っていただいたことに、地域の人々は大変感謝しております。その時の支援のきずな(ご縁)を、今後は元気になった南予地域に再訪いただき、ゆっくり南予を楽しんでもらうことでお返ししていきたい、というメッセージがこのテーマに込められています。そのため、全国の一般の方に広く情報を届けつつも、「ご縁のある方々にもっと深く南予地域を知ってもらうきっかけ作り」を進めていくことがポイントとなっています。

――きずな博のコンセプトは、どのような経緯で決まりましたか。

南予地域では2004年にも「えひめ町並博2004」という、地域の魅力を全国に発信するイベントを行いました。その時に観光業の従事者だけでなく、住民を含めたまち全体で地域産品のブランド構築や観光客のおもてなしを行い、地域で計83グループができ、ミクロな経済循環が始まりました。今回、印象的だったのは、当時の参加住民や地域の方々に加え、この十数年間の間に、南予地域に多く移り住んで来られた、地域おこし協力隊の方々やIターン、Uターンの若い人たちが新たな住人として地域づくりの核となって活躍する姿でした。

「ワークシフト」「ライフシフト」などコロナ禍で世の中の働き方や人生観が大きく変わりましたが、ここ南予ではそのはるか前からすでに若い方の移住や、地域の環境を活かして新たな挑戦を始められる方々が増えていました。このような地域からボトムアップでゆっくりと時間をかけて進みつつある南予の変化を、コロナ禍だからこそ全国に波及させていきたい、というメッセージを込め、コンセプトを“南予から発信する「えひめシフト!!」”としました。

体験価値のデザインを重視し
多彩なプログラムを提供

――自然体験やワーケーションなど様々なプログラムがありますが、仕掛けづくりの工夫についてお聞かせください。

体験や経験をどうデザインするか、いわゆるエクスペリエンスデザインを大事にしました。例えば、ある観光エリアでは養鶏場の近くに宿泊所があるという場合、旅行者には泊まりか日帰りかという2つの選択肢がありますが、「朝食で食べる卵を養鶏場に行って自分で採卵する」という体験が入ると、それが目的・動機となり、宿泊につながります。決して効率的ではないですが、平飼いの鶏卵の美味しさや、その前後の体験が価値となり、消費時間と消費単価が上がることが大きなポイントです。

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