パイロットvs三菱鉛筆 DXはどこ吹く風、海外市場で躍進

コロナ禍による個人消費低迷、在宅勤務の拡大による法人需要縮小など、文具業界には逆風が吹いたが、老舗メーカー2社のパイロットコーポレーションと三菱鉛筆の業績は、主に海外市場の回復から過去最高となった。2社は今後、どのような方向へ進むのか。

非筆記具事業で新たなステージを迎える、文具の老舗2社

筆記具市場は、コロナ禍による法人需要縮小などの逆風を受けたものの、老舗2社、パイロットコーポレーションと三菱鉛筆の業績を見ると、海外市場の回復、急激な円安の進行などから過去最高となった。コロナ後、そしてその先に向けて、この2社はどのような戦略を練っているのだろうか。

パイロットコーポレーションは、日本初の国産万年筆の開発に成功し、1918年に「並木製作所」として創業した。1920年代にはニューヨーク、ロンドン、上海、シンガポール荷拠点を設けるなど早くから海外に進出し、現在の売上構成比でも北南米、欧州、アジアが約7割を占める。肩などの負担を低減する「ドクターグリップ」、こするとインクが消える「フリクションボール」など人気の筆記具を数々送り出しているが、宝飾品や玩具、産業資材といった筆記具の技術を活かした他の事業も今後のさらなる拡大が期待される。

2022年3月にグループパーパス「人と創造力をつなぐ」を定め、それに基づく「2030年ビジョン」、「2022-2024中期経営計画」を策定しているが、そのビジョンでも非筆記具事業を第2の柱にすることを掲げた。「書く」とその周辺の行動、「書く」とライフステージを掛け合わせて新たな価値を創造することで、非筆記具の売上構成比を2030年までに25%に引き上げるとしている。ビジョン実現に向けた中期経営計画では、マーケティングやR&Dの強化はもちろん、資本業務提携や新規事業構想に着手する方針を盛り込んだ。2022年に手帳・ノート類を製造するマークスグループの子会社化を決定したのは、その第一弾といえる。

一方、三菱鉛筆の歴史は明治にまで遡る。1887年に「眞崎鉛筆製造所」として創業、1901年には初の国産鉛筆を当時の逓信省に納入している。同社も海外進出は早く、1926年には世界各国への直輸出を開始した。1950年代は、今なお愛され続ける高級鉛筆「ユニ」を発売、ボールペンや繰り出し式シャープペンシルを世に送り、今日、それらは滑らかな書き味のボールペン「ジェットストリーム」、芯が自動回転して常に尖った部分で書けるシャープペン「クルトガ」といった人気商品に成長している。

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