コンビニ衣料品をデザインでアップデート ファミリーマート

ファミリーマートがファッションデザイナーの落合宏理氏を起用して開発した衣料品の新ブランドが大人気だ。その立ち上げから担当した同社日用品・雑誌部の吉村直途氏と須貝健彦氏に経緯と成果について聞いた。

文・矢島進二 日本デザイン振興会 常務理事

ファミリーマート日用品・雑誌部 ※所属は2/1時点 吉村 直途(左)、須貝 健彦(右)

近年コンビニ各社が力を入れているのは、プライベートブランド(PB)の強化だ。ナショナルブランドでは競業他社との差別化が困難となり、また粗利率の高さも要因であろう。そこで要となるのはブランディングであり、第一線で活躍するデザイナーがブランド全体のディレクションを統括するケースが増えている。

ファミリーマートが今回チャレンジしたのは、ファッションデザイナーの落合宏理氏を起用した衣料品のPB「コンビニエンスウェア」だ。

ファミリーマートの「コンビニエンスウェア」。
全体のディレクションは落合宏理氏が担当

その構想は2019年4月、同社が無印良品の商品を扱うことを停止したしばらく後にスタートした。

同社で衣料品を担当する吉村氏と須貝氏はともに「衣料品における新しい価値創造」を考えてきたという。「コンビニで販売する服は、ある意味で“その場しのぎ用”としてみなされてきました。売れるのは金曜と土曜の深夜が多く、また土砂降りの雨が降るとソックスが売れるなど、あくまで緊急需要商品でした。そこから脱却をしたかったのです」と吉村氏は話す。

「コンビニの常識を疑い、生活をアップデートするプロジェクトにしたいと強く思っていました」。この考えに賛同をしてくれるパートナーを探し、出会ったのが落合氏だ。2007年に自身のブランド「FACETASM」を立ち上げ、現在でもパリ・メンズ・ファッションウィークで発表を続ける気鋭のデザイナーである。

「落合氏から『日本人の生活様式を変えるような革命を起こす』ということに強く賛同頂きました。そして実際に落合氏は深くコミットして頂き、このプロジェクトが走り始めました」

「じぶんを愛そう。いい素材、いい技術、いいデザイン。」というコンセプトをチームで生み出した。特に「じぶんを愛そう」は落合氏がとても大事にしていたワードだという。

2020年6月から大阪府内の約150店舗でテストマーケティングを兼ねた先行販売を展開。実際に落合氏も50店舗以上を巡り、店舗スタッフと座談会などをして意見を聴取し、現場を巻き込んでいった。「その結果、想定以上の良い成果が出ました。当然商品力の高さがあったからですが、落合氏が現場を大切にし、積極的にコミュニケーションをとってくれたことが、その大きな要因の一つだと思います」

そして、2021年3月に約70点のラインアップ数で全国展開を開始する。

コンビニ×アパレル
×ブランディング

現在同社は伊藤忠グループに属しているが、吉村氏は「繊維事業が強い伊藤忠商事のサポートがあったのは、プロジェクトがいいスタートを切れた要因の一つです」と振り返る。

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