「環境で儲ける」ための実践講座 『GREEN BUSINESS』
世界各国が脱炭素へと舵を切る中で、日本政府も「2050 年のカーボンニュートラル」を宣言し、また、2030年度の温室効果ガス削減目標として2013 年度比46%削減を掲げた。こうした中で、環境ビジネスの具体化があらゆる企業に強く求められるようになっている。しかし、“しっかりと儲けを出せる”環境ビジネスの創出は並大抵のことではない。
本書は、長年に渡り環境ビジネスの最前線に立ってきた吉高まり氏が執筆した、「環境をよくして稼ぐ」ためのビジネスデザインの実用書だ。
吉高氏は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券でクリーン・エネルギー・ファイナンス部を立ち上げ、環境金融コンサルティング業務に長年従事。2009年から慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科非常勤講師として環境ビジネスデザイン論を担当し、2021年には社団法人バーチュ・デザインを設立、グリーン・サステナビリティ分野の事業実装に取り組んでいる。また、もうひとりの著者の小林光氏は元環境庁事務次官として幅広い環境政策の立案等に関わり、現在は東京大学先端科学技術研究センター研究顧問を務めている。
本書の前半は「基礎編」で、第1章では環境ビジネスが必要な理由(そして必要だが実行は難しい理由)を、具体的な失敗例の紹介と共に解説。2章では環境ビジネスの共通技術であるマテリアル・バランスや、シーズとニーズに基づく環境ビジネスの発想法を紹介し、3章では環境法をビジネスの味方にするためのコツを説明している。
後半は「応用編」。4章では既存企業の資源を活用して環境ビジネスに取り組む場合のコツやメリット・デメリットを説明する。5章は起業家としてゼロから環境ビジネスを創造するための方法論を解説した。ここでは、「ユニコーン型」ではなく持続可能性や共生を重視した「ゼブラ型」のスタートアップ手法と環境ビジネスの親和性や、環境スタートアップのビジネス発想方法、事業計画づくりや資金調達方法などまでを、具体的な事例を交えつつ紹介している。6章では事業拡大のための資金調達手法について解説している。
そして7章では、地球温暖化や生物多様性、海洋プラスチック汚染、SDGsの実現という4つの切り口のもと、これからの環境ビジネスの「狙い目」を具体的に紹介している。
著者は「環境を壊して儲けを出すビジネスモデルの先行きはなくなった」と強調し、経済の停滞が続く日本では、環境という新分野への投資、ビジネスモデルのイノベーションが不可避であると説く。400ページ超のボリュームだが、大学で実際の講義を受けているかのように、環境ビジネス立ち上げの「作法」がすらすらと頭に入ってくる。環境ビジネスでスタートアップを目指す人はもちろん、企業内で環境ビジネスの事業化やスケールを求められている人にもおすすめしたい一冊だ。
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