『Succession Dynamics: A Case Study of a Japanese Legacy Family Business』
『Succession Dynamics:
A Case Study of a Japanese
Legacy Family Business』
- 落合康裕 著
- ソフトカバー版 本体49.99ドル
(eBook版 39.99ドル) - Springer(SpringerBriefs in Economics)
- 2026年8月
日本には、創業から100年を超える老舗企業が世界で最も多く存在するといわれる。なぜ一部の企業だけが、後継者の交代という壁を何度も乗り越えて生き残ることができるのか。本書は、1849年に東京日本橋で創業し、七代・175年にわたって海苔の製造販売を担ってきた山本海苔店を舞台に、その承継メカニズムを解き明かした英語の単著である。これまで日本語での発表が中心だった老舗研究を、日本人研究者の立場から世界に発信する試みでもある。
老舗は、ただ看板を守っているだけでは続かない。後継者が先代から受け継ぐのは、店舗や資金といった目に見える財産だけではない。ブランドへの信頼や代々語り継がれてきた一族の物語も、世代を重ねるごとに積み重なっていく。著者はこれをレガシーブランドという見えざる資産として捉える。本書は老舗経営を三つの角度から読み解く。①数世代にわたって蓄積されるレガシーブランド。②後継者が周囲からこの人になら継がせても大丈夫だと認められていく、正統性獲得のプロセス。③伝統を守ることと自分らしさを出すことの間で後継者が揺れ動く「事業承継のジレンマ」。これらを一つの流れとしてまとめたのが、著者独自の「レガシー蓄積連鎖(LAC)モデル」である。
本書は全4章からなる。第1章で見えざる資産と後継者の挑戦との関係を理論的に整理し、第2章と第3章では山本海苔店の史料をもとに、ブランドの形成と後継者の育成を複数世代にわたって描く。この2章と3章はビジネススクールのケース教材としても使えるよう工夫されている。第4章では、後継者がブランドを引き継ぐ正統性をどう示すかを論じる。
本書を支えるのは、2012年から10年以上続く山本海苔店への地道なフィールド調査である。家系図や古記録、経営者・後継者への丁寧な聞き取りに基づく実証性の高さは、同社の長年の研究協力あってのものであり、老舗研究の中でも際立っている。また本書の多くは、著者がドイツのヴィッテン・ヘルデッケ大学ファミリービジネス研究所(WIFU)に客員研究員として滞在した1年間に執筆されており、国際的な研究環境の中で練り上げられた一冊でもある。
少子高齢化や後継者不足が深刻化する今、事業承継は日本社会全体の課題である。本書の知見は、国内の承継支援だけでなく、海外のファミリービジネスやその研究者にとっても日本発の参考事例となるはずだ。ファミリービジネスやアントレプレナーシップ、日本的経営に関心をもつ研究者・大学院生はもちろん、事業承継の現場に立つ実務家にも、ぜひ手に取ってほしい一冊である。
全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。
-
記事本文残り53%
月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!
初月無料トライアル!
- 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
- バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
- フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待
※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。