キャッシュバックと同額分を祭りに寄付 タッチ決済で能登の再生支援
ビザ・ワールドワイド・ジャパンは、石川県内でのタッチ決済利用者へのキャッシュバック分と同額を能登の祭り支援として石川県に寄付する「石川・能登地域の復興と地域コミュニティ再生支援」イニシアチブを9月30日まで実施すると発表した。経済的な支援にとどまらない新たな支援のあり方として注目されている。

シータン・キトニー
ビザ・ワールドワイド・ジャパン社長
今回のイニシアチブ開始に当たって金沢市で記者発表に臨んだビザ・ワールドワイド・ジャパン社長のシータン・キトニー氏は、その目的について「2024年1月に起きた能登半島地震、9月の能登半島豪雨により分断された地域のつながり、そして、復興途上で孤独や不安の中にいる人たちに、元気や笑顔を取り戻してもらえるよう、地域の心と絆の再生、さらには絆の象徴であるお祭りの復活に向けて貢献したい。また、石川県を訪れる人を増やし、今後も続く被災地の再建に不可欠な資金を集める一助になりたい」と述べた。
同イニシアチブでは「Visa 能登のために、タッチ」として、2つのキャンペーンを実施する。1つめは、石川県民と石川県を訪ねる人が対象の、利用者はキャッシュバックを受けられ、と同時に、能登の祭り支援のためにVisaが石川県に寄付をするというもの。Visa割に登録した上で、登録したカードで、県内の対象店舗でVisaのタッチ決済をして買い物をすると15%分をキャッシュバックする(登録カード1枚につき最大1000円)。キャッシュバック総額と同額が祭りの支援のため石川県へ寄付される。スーパー、ドラッグストア、レストラン、ホームセンター、公共交通機関など日常生活や観光に欠かせない幅広い店、施設が対象店舗となっている。
2つめのキャンペーンは、日本全国どこにいてもだれでも参加できる「Visa 能登のために、タッチ」~全国SNSキャンペーン The power of touch~。X上の特設サイトの画像をタッチすると1タッチ分を1円と換算してVisaが石川県に寄付し、能登の祭り支援を行う。
「Visaのテクノロジーとネットワークを最大限に活用し、石川県にお住まいの方はもちろん、ご訪問中にVisaのタッチ決済をご利用いただく方、日本全国からオンラインでご参加いただく方まで、だれもが参加できる仕組みを用意した」とキトニー氏は語る。
能登における祭りの重要性
当事者のインタビューから痛感
同社では、キャッシュバック形式による地域限定のキャンペーンを大阪で先行して実施しており、月のタッチ決済利用が300万アカウントを越える、公共交通のタッチ決済の利用が大きく増えるなどの効果があった。導入前の2024年2月〜9月と導入後の2024年10月〜25年3月を比較すると、大阪は7.5倍に増加した(全国平均は2倍)。石川県のキャンペーンについては地域コミュニティの支援という観点から、踏み込んだアプローチを検討。「キトニー社長の強い意向により、被災地に経済的メリットを提供するだけでなく、復興支援のしくみを取り入れることを決めました」と、同社コンシューマーソリューションズ シニアマネージャーの三浦知実氏は、イニシアチブ実施に至った経緯を説明する。
どのような手法で復興に貢献できるのかを探るため、石川県在住者と全国の消費者を対象にWeb調査を実施したほか、能登半島地域出身の方、勤務の方を対象にインタビューを行った。
「お話を伺うなかで、能登で暮らす皆さんにとっては、お祭りがいかに特別で大切な存在であるかを知ることができました。地域コミュニティの結束や心の絆を再構築するためにも、お祭りの支援が最適な支援の方法だという結論に達しました」と述べる。加盟店からの反応も良好で、多くの店舗がコンセプトに賛同して参加しており、プロジェクトを通じて、カード会員と加盟店、そしてVisaが一体となって地域課題に取り組む新しい形のCSR活動としても注目を集める。
また、社内で今回のイニシアチブへの取組に対する一体感を高めるため、8月23日に開かれる輪島大祭に約20名の社員がボランティアとして参加する予定だという。
「今回のプロジェクトは、地域コミュニティの支援を、利用者やエコシステムの参加者への経済的な利益という観点からだけではなく、絆を取り戻す支援というエモーショナルな要素も組み合わせた複合的な取り組み。効果やインパクトについて検証しながら、地域の抱える課題への取り組み、今地域経済・地域コミュニティの支援をさまざまな形で考えていきたい」と今後の横展開に可能性についても言及した。
今回の記者発表に先立ってあいさつに立った石川県の馳浩知事は「能登のキリコ祭りは2015年に日本遺産に認定されたが、2024年の地震、豪雨によって祭りを維持できるかどうかの大きな分岐点に立たされています。2024年は県も応援して、お祭りの4分の1については復活できたが、全体的にはいまだ継続が困難な状況が続いている。その折にVisaからイニシアチブのお話をいただいた。2025年は復興元年の年。Visaによる、能登の復活に貢献しようという姿勢に感謝したい」と話した。

イニシアチブ開始の記者発表であいさつする石川県の馳浩知事
石川県 祭りの復活でVisaと思いが合致
Visaから、巨大な燈篭「キリコ」がまちを練り歩く「キリコ祭り」をはじめとした能登の祭りの開催継続に向けて寄附をしたいとの意向を受け、石川県の窓口となったのが、石川県文化観光スポーツ部 文化振興課 文化活動促進グループ グループリーダー(専門員)の土肥大祥氏だ。

土肥大祥 石川県文化観光スポーツ部 文化振興課 文化活動促進グループ グループリーダー(専門員)
能登地方では、約700の祭りがあるとされ、その中でも特に有名なキリコ祭りは、各町会単位でキリコを巡行しているという。「能登を離れて暮らす人たちも毎年祭りの日には地元に帰ってくるなど、地域コミュニティの形成にとって重要な行事です。しかし、能登半島地震によって多くの地域住民が仮設住宅や他地域への避難を余儀なくされるなど、祭りの開催が危ぶまれる状況となりました」と土肥氏は背景を説明する。
祭りの再興へ、助成を開始
こうした祭りの果たす役割を重視し、石川県の創造的復興プランの中でも地域コミュニティの再建に向け「能登の『祭り』の再興」がリーディングプロジェクトの1つに位置付けられた。具体的には、祭りに使う用具の修理や開催のための経費に対する助成制度を設けている。2024年度は98件の申請があり、5800万円あまりの助成金が交付された。
また、祭りの担い手不足に対応するため、全国から「祭りお助け隊」としてボランティアを募集する新たな取り組みも今年度から始まった。すでに700人以上がボランティアとして登録し、地域の要望に応じて、順次祭りに参加しているという。「ボランティアとして訪れた方々が継続的に地域と関わっていくことで、関係人口の創出にもつながっていってほしい」と土肥氏。
今回のプロジェクトの実現については「県とVisaの祭りに対する支援の思いが合致し、協力して取り組みを進めています。能登の復興に向け、さまざまな民間企業による支援の輪が広がることを期待しています」と語った。