「攻め」と「守り」を一体で回す 郡山市のDX推進体制

郡山市は、副市長をトップに据え、DX推進とリスク管理の両輪を一体で運用する体制を構築し、庁内業務のDXやスマホ手続きを広げてきた。二瓶浩之DX推進監が、その実践のポイントを語った。

郡山市政策開発部 DX推進監 二瓶浩之氏

「攻め」と「守り」が効果的に機能
統合的なDX推進体制

デジタル化で業務効率化の可能性が高まる一方、扱う情報やシステムにはサイバー攻撃や漏えいのリスクがつきまとう。郡山市はこの二律背反に早くから向き合ってきた。

2001年に副市長を本部長とする推進体制(現在の郡山市DX推進本部)を、2003年に副市長を最高情報セキュリティ責任者(CISO)とする「郡山市情報セキュリティ会議」を設置、意思決定の基盤を整えた。現在は副市長がDX推進本部の最高デジタル責任者(CDO)と情報セキュリティ会議のCISOを兼ねる。両組織の事務局を担うのが「DX戦略課」だ。

「DX戦略課は、DX推進本部と情報セキュリティ会議を俯瞰的・統一的に制御するいわば『車軸』です。このコントロールのもとで、DX推進本部がアクセルを、情報セキュリティ会議がブレーキの役割を果たします。DX推進を止めないために両者で最適解を探ります。相反する2つの機構が統一指針と迅速な意思決定のもとに協働できるのは、DX戦略課という軸があるからです」。

ガードレールを万全に
誰もが安心して使える環境整備

こうした体制のもと、同市では2024年2月に公務員業務専用のChatGPT「マサルくん」を、利用ガイドラインの策定と同時に運用開始。さらに同年10月には関連文書を参照して回答するRAG機能を備えた「exaBase 生成AI for 自治体」を利用開始した。そこでは、利用をテキスト生成に限定し、個人情報の入力を禁じ、総合行政ネットワーク(LGWAN)で使うことを前提とした。

利用者は2025年度に前年度比約4倍の3,340人へと急増し、生成AIによる業務時間の削減は年約1万2,776時間に上った。

また、セキュリティを確保した専用の無線ネットワークとシンクライアント環境でモバイルワークを可能にする一方、個人番号系は対象から外し、扱える範囲を明確に限定した。

「『安全に』『情報漏えいに気を付けるように』と注意喚起するにとどまらず、リスクを見極めて、使うべきでないものは使えなくする。そのようにして職員の心理的負担を取り除き、安心して使える環境を整えてきました」。

効果の継続的モニタリング
「5レス」で可視化

郡山市では、こうしたDXの進捗管理にも力を入れてきた。数値は2週間ごとに副市長に報告される。指標としているのは、「ペーパーレス」、「キャッシュレス」、「カウンターレス」、「ファイルレス」、「ムーブレス」の「5レス」だ。プリントアウトの状況、キャッシュレス決済比率、来庁者数とオンライン申請件数、各業務のGIS(地理情報システム)アクセス数、ウェブ会議開催数等を可視化し、進捗状況を継続的に追ってきた。

「推進の状況と、セキュリティ関連の20項目余の内容を常に確認し、『攻め』と『守り』の状態を同じテーブルで把握しています」。

こうした統合的なDXを担い、発展させていくため、市の職員に求められる資質として「傾聴力と説得力」が欠かせないと二瓶氏は指摘する。

「押し付けるのではなく、小さな成功体験を通して背中を押し、定着させることが大切です。各部局にデジタルマネージャー、各所属にデジタルリーダーを置き、推進役を育てています。そのようにして将来にわたって市民サービスを向上させていきます」。