石見銀山生活文化研究所 「復古創新」のものづくりとナラティブ

かつて石見銀山の繁栄を支えた大田市大森町を拠点に、「根のある暮らし」を実践しながら、アパレルブランドを筆頭にした、ライフスタイル全般に関わる事業を幅広く展開している石見銀山生活文化研究所。同社代表の松場登美氏と取締役の松場忠氏に、その歩みや理念、地域貢献などについて聞いた。

地域に根を下ろし
「衣・食・住・美」を提案

島根県大田市大森町。世界遺産・石見銀山の山間に佇む人口400人の里山に根を下ろし、アパレルの企画・製造・販売をはじめ、古民家再生、宿泊施設・飲食店の経営、食品・スキンケア商品の企画開発と、幅広く事業を展開している石見銀山生活文化研究所。「衣・食・住・美」に関わるものづくりを通し、人が心地よく暮らすためのライフスタイルを提案し、その想いは世代を超えて多くのファンを魅了し続けている。

石見銀山生活文化研究所代表取締役所長の松場 登美氏(左)、取締役の松場 忠氏(右)

始まりは約40年前。デザイナーで同社代表の松場登美氏が、夫である石見銀山群言堂グループの松場大吉会長と共に、大吉氏の実家がある大森町に帰郷した1981年に遡る。

「今でこそ石見銀山遺跡が世界遺産に登録されたものの、その頃の大森町は閉山後の廃墟と化していました。一方、世の中はバブル経済の好景気に向かっていた時期。時代に逆行するかのように帰郷した私たちに、親戚筋から『草の種はたとえ落ちたところが岩の上であっても、そこに根を下さなければならない』という言葉を贈られました。当時の大森町は岩の上という表現にふさわしいほど厳しい状況でしたが、美しい里山と歴史ある町並みに魅せられ、『この場所だったら根を下ろしたものづくりができる』という直感に従ったのです」と登美氏は微笑む。

登美氏が子育ての合間に作った小物類を、大吉氏が行商しながら売り歩くスタイルからスタートし、帰郷から8年後に、300坪の敷地に建つ築170年の旧商家を手に入れた。それが大森町のメインストリートにある「石見銀山群言堂」本店だ。オリジナルブランドの服や雑貨を販売する他、地元食材を使ったカフェを併設する。

大森町のメインストリートにある「石見銀山 群言堂」(右)

オリジナルブランドの服や雑貨が並ぶ店内

「この店は初めて再生した古民家ですが、単にモノを売る場所ではなく、私たちの考え方を表現するショールームにしたいと思っていました。当時、この過疎化した町での出店に誰もが首を傾げましたが、それでも私たちはこの豊かな田舎の風景に価値が見出される時代がくると信じ、18年の歳月を掛けて理想の空間を作り上げました」

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