地銀のネットワークを駆使し、金融業の枠を超えて地域課題を解決

1935年の設立以来、一貫して地域の事業や暮らしに貢献を続ける常陽銀行。時代の流れとともに社会課題が複雑さを増していく中、地域金融機関には現在、どのような役割が求められているのか。同行の笹島律夫頭取に、地域とともに歩む成長戦略と今後のビジョンを聞いた。

地銀に求められる役割の変化
コンサル力で社会に貢献

茨城県水戸市に本店を置く常陽銀行は、関東を中心に国内に188の支店・出張所を構えるほか、上海、シンガポール、ニューヨーク、ハノイにも事務所を置く。2016年には足利銀行と経営統合し、めぶきフィナンシャルグループとして新たなスタートを切った。2019年にはつくば地区を中心とした最先端技術を有するベンチャー企業の事業拡大支援を目的としたファンド「つくばエクシードファンド」を組成するなど、地域経済発展のための事業を様々な形で続けている。その中で、笹島律夫頭取は、地銀に求められる役割の変化を強く実感している。

笹島 律夫(常陽銀行 代表取締役頭取)

「総合金融サービス業として、お金を預かったり融資をするのは当たり前のところ。しかし、世の中全体が『金余り』という状況が続く中、従来の銀行の役割は相対的に低下してきている」

地銀に問われるのは、地域の課題解決への貢献だ。

「地銀の役割は、融資等、単にお金を出すに止まらない。事業者や生活者が何に困っているのかを探り、その課題へのソリューションを提供することが鍵となる。コロナ禍はもちろん、自然災害も増える中、今ほど課題解決への意識が求められる時代はない」

そこで同行が現在注力しているのが、コンサルティング業務だ。昨年6月には営業本部内にコンサルティング営業部を新設した。専門的知見を持つ、コンサル業務を担う人材は以前から存在していたが、複数の部署に分散していたため効率が悪かった。そこで彼らを新部門に集約させ、業務効率化と専門性のさらなる深化を図った。

何となく地域に頼りに
されるだけでは不十分

一口にコンサルティングと言っても、同行が手掛けるそれは単なる事業計画提案ではない。蓄積された膨大なデータベースや、グループが持つ広域ネットワーク、顧客基盤を有機的に組み合わせ、顧客が抱える様々な課題に最適なソリューションを提示している。

「銀行業という従来の枠組みを超え、地域の困りごとを支えていく。法人のお客様なら事業の継続・成長を、個人のお客様なら豊かで安心・安全な暮らしを望まない方はいない。いつの時代も変わらないそのニーズに応えることが当行の使命。現在87名が法人向けコンサル業務に関わっているが、ゆくゆくは全行員がその役割を担えるようになることが理想である」

社会、そして社会課題が一層複雑化する中、一人一人の行員にもより高度なスキルや知見が求められるようになった。そこで同行はDXにも積極的に取り組み、徹底的な業務改善を行っている。例えば、営業担当者が顧客に発行する受取書を電子化し、事務作業を大幅に簡略化した。また、営業用行用車の管理をデジタル化し、顧客への訪問頻度を明らかにした。営業成績の良い行員の行動パターンは可視化され、管理の側面ではなく、成功要因の分析から他の行員の改善策になる。

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