日本酒造りを体験できる酒蔵ホテル 100年後も誇れる故郷をつくる

長野県佐久市の酒蔵を宿に、本格的な蔵人体験を提供するツアーを立ち上げたKURABITO STAY。コロナ危機により、ホテル営業とツアーは自粛を余儀なくされたが、酒蔵および地元の生産者と協力し、地元の特産品・酒のセット販売と、バーチャル酒蔵見学を開始した。

長野県佐久市は、群馬県との県境に位置する東信の主要都市だ。農業が盛んなほか、水と交通の便の良さに目を付けた大企業の工場が多い。新幹線を使えば首都圏にも通勤が可能なことから、2拠点居住やワーケーションでも注目されている。一方で、観光の目的地となるケースはまれだ。高原リゾートとして世界的な知名度を誇る軽井沢町、小諸城址懐古園を擁する小諸市など、近隣自治体と比べると、観光地の印象は薄い。

KURABITO STAYは、そんな佐久市に「世界初の酒蔵ホテル」を開業するべく事業を開始した。「事業の目的は、持続可能なまちづくりにあります」とKURABITO STAY代表取締役の田澤 麻里香氏はいう。工場の誘致に成功した佐久市でも、人口は2010年をピークに減少中。しかし、旅行者などの関係人口を増やすことで、定住人口減の影響を緩和できる。また、コロナ危機前は、外国人観光客を呼び込むことで、さらに大きな経済効果があると期待されていた。

田澤 麻里香 KURABITO STAY 代表取締役

泊まり込みで酒造りを体験

ただし、そこにはハードルもある。小諸市出身で旅行会社に勤務した経験がある田澤氏は、佐久市及びその周辺の自治体の観光業を分析。「バスツアーなどの団体観光客に頼る構造と、夏の繁忙期と冬の閑散期の平準化がなされていないことが大きな課題です」と指摘する。そこで、個人観光客向け、さらに冬場の観光コンテンツとして構想したのが、酒蔵に滞在して日本酒造りに参加する「KURABITO STAY」だ。

杜氏の寮「広敷」を改装したKURABITO STAYの内部(左)。蔵人体験の試行ツアー(右)は好評だった

佐久盆地は日本酒醸造に欠かせない良質な水に恵まれており、稲作も盛ん。恵まれた立地を生かして、13の酒蔵が酒造りを続けている。日本酒は主に冬、醸造するものであるため、田澤氏はこれを冬場の観光の目玉にできるのではないかと考えた。

一般的な日本酒の酒蔵見学では、実際に製造に参加することはできない。蔵の中をのぞき、いくつかの銘柄を試飲して、お土産を購入して帰るというのが基本パターンだ。泊まり込みで日本酒造りに参加できるツアーがあれば、他にない体験を求める観光客を集めることができる。外国人にも対応できれば、客層はさらに拡大する。

そこで、まずは宿泊施設を整備した。佐久市の酒蔵には、冬季に出稼ぎに来る杜氏の宿泊施設である「広敷」が付随している。この空間は、酒蔵の社員が杜氏を務めるようになった現在は使われていない。そこで、ここをリノベーションして、ツアーの間観光客が宿泊できるホテルに改装した。

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