デジタルフォントで躍進のモリサワ 多言語対応で海外へも進出

フォントベンダーとして国内トップシェアを誇るモリサワ。印刷業界はもちろん、教育や観光、公共の分野にまで事業の幅を広げる同社。時代の変化に柔軟に対応し、文字と共に歩んできた改革の歴史と、新たな挑戦について、同社社長の森澤彰彦氏に聞いた。

1924年、森澤彰彦社長の祖父である森澤信夫氏は、写真の原理で文字を現して組む『邦文写真植字機』を発明した。

森澤 彰彦 モリサワ代表取締役社長

「世界で最初に写真植字機を実用化したのが祖父でした。素晴らしいアイデアではありましたが、活版印刷全盛期だった当時、写真植字機は、まだまだ日の目を見るものではありませんでした」と森澤社長。戦後、ようやくオフセット印刷の流れが見え始め、写真植字機を本格的に事業化したのが、今に至るモリサワの起こりと言える。

時代と共に、手動の写真植字機は電子制御へと移行。高額な専用システムを作り印刷の専業者に買ってもらう、ものづくり企業から始まったモリサワだが、1980年代後半から90年代にかけ、DTPの登場でダウンサイジングが起こったことで、大きな機械、システムを売るビジネスは衰退していった。

当時、モリサワでは、それまで培ってきた「文字を作る」ところにフォーカスし、新しいマーケットを開拓していった。特に、1987年に米アドビシステムズ社と契約を結び、パソコン環境に適応したデジタルフォントの開発に取り組んだことが、同社の大きなターニングポイントとなった。

「企業30年説と昔はよく言いましたが、15年~20年で、ひとつ大きな技術の転換が起こります。そういうものにどう対応していくかが、これまでも、そしてこれからも、経営に求められる力なのかなと思います」。

多言語マーケットが次の市場
フォントを通じた貢献目指す

創業から90年以上にわたり、印刷業界と深い繋がりを持ってきたモリサワ。「インターネットの登場が印刷業界に与えた影響は大きい」と森澤社長はいう。インターネットの登場でリアルタイムに様々な情報が更新されるようになり、紙のメディアが即時性でも情報量でも勝てなくなった。

「印刷による情報伝達という媒体価値そのものが毀損され、紙メディアは弱体化していますが、紙は残ると思いますし、情報を綺麗に整理して世の中に流通させる技術は、やはり印刷業界が最も優れていると思います。そういうものを、いかに電子とうまく融合させるかが重要です」。

モリサワの社是は「文字を通じて社会に貢献する」。これまでは、日本語の文字をメインに作って、印刷業界や出版業界に貢献してきた。グローバル化の波があらゆる業界に押し寄せている今、他言語や他業界にも視野を広げる。例えばモリサワでは現在、印刷用データを簡単な操作で電子データに変換し、かつ多言語化して配信する、多言語ユニバーサル情報配信ツール「MCCatalog+」を提案している。

「社是の軸足をぶらさず、新しいグローバルなマーケットを開拓するには、多言語化は欠かせません。かつ、社会に広く貢献するためには、印刷業界だけでなく、他分野にも視野を広げていく必要があります」。

全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り51%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。