老舗梅干メーカーが梅調味液でバイオガス発電 変わらぬ創業の精神

和歌山の老舗梅干メーカー・中田食品。梅酒や梅の加工品も手がける同社は、「梅調味液によるメタンガス発電所」の竣工など「梅」を軸に様々な事業に乗り出している。その根底にあるのは地元に対する温かな、そして切実な想いだ。

中田 吉昭(中田食品 代表取締役社長)

和歌山県は梅の生産高が全国一位であるうえに、全国の生産量の約65%を占めている。そして、中田食品が本社を置く田辺市および隣のみなべ町という半径約20kmの範囲で、そのほとんどが生産されている。この梅栽培のシステムは2015年、「みなべ・田辺の梅システム」として世界農業遺産に認定された。

中田食品の創業は1897年。米穀荒物商として地元農家のための商売を興した創業者の中田源次郎は、大正初期に梅の生産を開始。当時は米やかんきつ類なども生産していた。第二次世界大戦後、農協が組織されたために地元農家向けの肥料販売などは農協の仕事となり、1950年に梅加工を専業として再スタートを切る。梅干のみならず1996年には梅酒の販売も開始した。

2006年にパリでの国際食品見本市へ出展。2012年には中国に現地法人を設立するなど、日本の味を世界にも広げつつある。

日本の味を守り続けてきた中田食品だが、最近では梅に関連した様々な試みでも知られる。最近話題になったのは「チョコレートに合う梅酒の開発」と、「梅調味廃液によるバイオガス発電所の竣工」だ。

チョコと梅酒のマリアージュ

2019年2月に発売された梅酒「GOJIRO」は、イタリアのカカオ専門家であるジャンルーカ・フランゾーニ氏と共同で開発した「チョコレートに合う梅酒」。一般的にチョコレートにはワインやブランデーが合うとされているが、もともと梅酒好きだったフランゾーニ氏は「梅酒もチョコレートによく合う」との考えを持っていた。それがきっかけとなり、「よりチョコレートに合う梅酒」の開発に至った。

2017年にテイスティング等を開始し、2018年5月末頃、酸味と渋みのバランスが良い「古城(ごじろ)」という品種の梅を使って仕込みを行った。そして翌年2019年に発売。日本国内だけでなくイタリアなど海外へも輸出され、好評を博している。

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