2019年6月号

不確実時代に求められる変革の視点

カタリストがつなぐ二つの価値 公民連携により新市場創出

柳橋 雅彦(有限責任監査法人トーマツ デロイト トーマツ インスティテュート 官民連携イニシアティブリーダー)

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不確実な時代においては、日本のGDPの8割を占める内需を掘り起こす視点も重要である。成熟市場である内需を掘り起こすには、「社会課題の解決」が力点となる新たな公民連携により、複雑な社会課題の解決と、新市場創出の双方を実現する。

世界は「VUCA」時代*1に突入したといわれます。ビジネスの原理原則が大きく変化し、あらゆる組織には既存の成功体験を捨て、自身を変革していくことが求められています。

左から有限責任監査法人トーマツ 執行役 井上雅彦、デロイト トーマツ グループ CSO 松江英夫、CEO 永田高士、三重県知事 鈴木英敬氏、デロイト トーマツ グループ パブリックセクター インダストリーリーダー 香野剛、三重県雇用経済部長 村上亘氏

カタリストとしての
プロフェッショナルファーム

デロイト トーマツ グループ(以下、デロイト トーマツ)は日本最大級の総合プロフェッショナルファームで、会計監査、コンサルティング、政策提言といったサービスを提供しています。単なる相談相手ではなく、企業や社会に積極的に働きかけて変革を促進し、熱量を上げる強力な「カタリスト(触媒)」でありたいと考えています。

不確実な時代にあっても、変革の道筋を示すため、2018年にデロイト トーマツ インスティテュート(以下、DTI)というグループ横断の組織を立ち上げました。個別の領域を超えた複雑で複合的な課題解決に向け、デロイト トーマツの擁する1万名以上のプロフェッショナルの知見や、150を超える国・地域のメンバーファームのネットワークを総動員する仕組みです。本連載では、不確実時代に求められる変革の視点を紹介していきます。第1回では、企業・行政に求められる視点として新たな公民連携の在り方を、第2回以降は具体的なテーマの中での連携事例を紹介します。

企業に求められる変革の視点

DTIでは企業向けの処方箋として、「『現場エコシステム』で確実なる底力」というレポートを掲載しました。その中で取り上げている指針のひとつである「新たなる内需」の掘り起こしについて説明します。

日本のGDPの8割近くは内需によって占められています。外部環境の変化が激しいと、国外に目線がいってしまいがちですが、不確実な時代だからこそ、一見成熟しきったこの足元の市場に注目することも重要です。その掘り起こしのための力点となるのが「社会課題の解決」です。

社会課題の解決は、社会的価値だけでなく、巨大な新市場掘り起こしの可能性という経済的価値を秘めています。人口減少はロボティクスの導入やデジタル化と親和性が高く、地方の過疎化はドローンやオンデマンド交通の導入、スマートシティ化といった機会を創出します。世界に先駆けて課題解決のイノベーションを示せば、外需獲得への足掛かりになるかもしれません。「新たなる内需」の掘り起こしは単独の企業だけでは実現できません。行政や地域等とビジョンを共有し、対等な立場で連携し取り組む視点が必要です。

行政に求められる変革の視点

不確実な時代の下で、行政が向き合う社会課題も、その複雑さを増しています。少子高齢化の中での労働力確保、効率的なインフラ維持、過疎地域での移動の確保、高騰する医療費の抑制等、これら課題には明確な解決策は見つかっておらず、様々な試行錯誤から、最適な解を生み出していくことが求められます。この試行錯誤も行政単独ではできません。また、民間企業に委託すれば答えが見つかるというものでもありません。複雑な解決に向けては、これまでの公民連携とは異なる新たな形が求められています(図1)。

図1 公民連携の比較

出典:デロイト トーマツ 提供資料

新たな連携では、企業の新規事業担当者やベンチャー企業等、これまで行政が関わることが少なかった主体と課題解決に向けたビジョンを共有することが必要です。その上で、フラットな関係を築き取り組みを進めていくことが求められます。そこで重要なのは助成金ではなく、地域の有する新たな資源を開放することだと考えています。

例えば、実証実験のための場や行政が持つデータ、新事業のための規制緩和等がそれにあたります。従来活用が難しかったこれらの資源は、デジタル等のテクノロジーやサンドボックス制度等の新スキームを活用することで、活用可能な形へ昇華できるようになりました。この取り組みをデロイト トーマツは「ソーシャルアセット・インキュベーション」と呼び、先行する自治体では、実証実験フルサポート事業等の取り組みが始まっています(図2)。

図2 ソーシャルアセット・インキュベーション

出典:デロイト トーマツ 提供資料

三重県との包括連携協定

ここまで見たように、企業・行政に求められる変革の視点は一致する部分が多くあります。双方が視点を変え、歩み寄ることで、不確実な時代においても、飛躍の道筋が見えてきます。

デロイト トーマツはその可能性を実践するため、今年3月に三重県と地域活性化に関する包括連携協定を締結しました。まず取り掛かる領域として、三重の食のブランド化及び海外展開、予防・健康づくりの推進、インバウンド対策が挙げられています。これらテーマについて、課題の抽出から、解決に向けたビジョンの検討、ビジョンをもとに集まる多様な主体のファシリテート、課題解決型のイノベーション創出を、フラットで開かれた連携のもとで進めます。

※1 Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguityの頭文字

 

柳橋 雅彦(やなぎばし・まさひこ)
有限責任監査法人トーマツ デロイト トーマツ インスティテュート 官民連携イニシアティブリーダー

 

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