IoTビジネス、成功の鍵は? 協業の視点、「巻き込み力」が不可欠

「いかにしてインターネットを新しいユーザーに届けるか」に関心を寄せるウフル園田社長。電通やライブドア等で培った経験・人脈も生かしながら、複数の企業・地域のハブとなり、難易度の高いIoT事業を次々にプロデュースする同氏に、IoTビジネス成功のポイントを伺った。

園田 崇(ウフル 代表取締役社長 CEO)

個人ユーザーを中心に広がりつつあったクラウドが、企業ユーザーの有効活用につながっていない。ここに商機を見いたした園田氏が、2006年に創業した会社がウフルだ。自身の経験をもとに、「インターネットのビジネスに取り組むうえで一番重要なことは、ユーザーの次の変化を捉えて、ビジネスを構築すること」と指摘する園田氏は、ユーザー視点に立ったサービスを次々と生み出し、事業を拡大させている。

2014年には、世の中に存在する「複数のプラットフォーム」や「規格の違う様々なハードウェア」を有効に繋げられない限りIoTは実現できないことに着目。IoT製品やIoTサービスづくりを包括的に支援する開発・運用サービス「enebular(以下、エネブラー)」をリリースし、IoT市場を切り拓くベンダーとしても注目を浴びている。

「私はテクノロジーの進化以上にユーザーの変化に興味があります。セールスフォースというプラットフォームをいかに企業ユーザーに使いやすい形で届けるかを考えたのと同じように、エネブラーでIoTというテクノロジーを世の中が必要とする形にして届けたいと思っています」(園田氏)。最近では、企業のIoT化を支援するだけでなく、和歌山県と協定を締結し、白浜町において未来の社会を創るチャレンジも開始。今後は国内だけでなく、ロンドンやサウジアラビアにおけるスマートシティ事業にも乗り出そうと先を見据えている。

クラウド利用者の相談から
IoTサービスが生まれた

エネブラー開発のきっかけは、セールスフォースのクライアントから、風力発電プラントの監理を省力化したいという要望を聞いたことだった。従来は、日本からプラントのあるカナダに人を送って運転状況をチェックしていたが、その頻度を減らすことができないかと相談されたという。労働力に依存することのないサステナブルな事業を実現することは世界的にも求められている領域であったことから、同社は新規にIoT領域を手掛けることを決意。風車タービンに設置された回転数、振動などのセンサーデータや業務アプリケーションを連携させて、風車の運転状況を可視化できるようにしたのだ。

エネブラーを利用することで、多様なデータの連携を容易に実現できる

「少子高齢化による労働力の減少は日本が直面している社会課題のひとつ。世界的にも、限られた資源を有効活用できる仕組みが求められています。人工知能やマシンテクノロジーが、人間と同じくらいの情報を吐き出すようになれば、IoTの可能性はさらに大きくなるはず。私たちは、複数のプラットフォーム、複数のデバイスを連携実装するための触媒になりたい」(園田氏)。

リリースから4年、エネブラーの顧客リストには名だたる大企業が連なっている。なぜこれほど支持されるのか。実は、PoC(Proof of Concept=実証実験)の段階では流行りのデバイスを使ってうまく可動したものの、いざ実装となると、複数のプラットフォーム、多様なデバイスとの接続や連携がうまくいかず、途中でつまずくケースが珍しくない。エネブラーは、より適切な連携になるように、たとえば処理をクラウドで行うのかエッジで処理してからにするのかといった調整ができる点が最大の特徴だ。

図 ウフルのネットワーク

ウフルでは、ソフトバンクなど様々な大手企業(株主など)と"協業"し、IoT事業を推進している

 

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