未来を先取りする「クルマのまち」 豊田市の強みは多様性

豊田市の製造品出荷額等は、1市だけで都道府県の上位に匹敵する規模を誇る。「クルマのまち」のイメージが強い豊田市だが、実は、自然の魅力に溢れたまちでもある。そうした「強み」を活かすべく、太田稔彦市長は、産業観光やスポーツツーリズムにも力を注ぐ。

太田 稔彦(豊田市長)

――豊田市の強みとなる特徴や地域資源について、どう見ていますか。

太田 愛知県の製造品出荷額等は約45兆円で全国トップですが、実は、このうちの30%を超える約14兆円を豊田市が占めています。この数値は、市町村レベルでは桁違いで全国トップですし、1市だけで都道府県レベルで見ても上位に匹敵するレベルです。豊田市は、そうした強固な産業基盤に恵まれています。

豊田市は自動車関連産業が集積しており、「クルマのまち」として知られる一方、そのイメージが強すぎて多様性に富んだ魅力が伝わっていないことが課題です。市内の70%を森林が占め、農業が盛んで米の作付面積や収穫量は県内1位、梨やお茶の産地でもあります。市の北端の地域では樹氷を見ることもできますし、香嵐渓(こうらんけい)の紅葉や、小原地区では秋に紅葉の中で咲く四季桜の美しい風景を楽しむことができます。

豊田市の都市部には、百貨店やコンサートホール、図書館、シネマコンプレックス、能楽堂、美術館、豊田スタジアムなどがコンパクトに集まっています。生活に便利な市街地がある一方で、中山間地に行けば豊かな自然もある。そうした多様性が豊田市の魅力なのです。

都市部には、豊田スタジアムをはじめ、スポーツや文化施設も充実。2019年には、ラグビーワールドカップの試合が行われる

豊田市だからこその産業創出を

――豊田市が有するものづくりの強みを活かし、成長産業の創出・育成をどのように進めていきますか。

太田 企業の方とお話をしていると、チャレンジしたいことがあっても、それを実践するフィールドがないという声をよく聞きます。豊田市は実証実験の場を積極的に提供しており、2016年10月には「豊田市つながる社会実証推進協議会」を立ち上げました。

これは、産学官がつながって、新しい価値を創造することを目指した協議会です。現在59(2018年10月18日時点)の企業・団体が加入しており、資源エネルギー問題や超高齢社会への対応、モビリティ関連などで様々な実証を行っています。

ものづくりで培われた知見や資源を活かした、豊田市だからこそできる自動走行技術やロボット技術等の「未来を先取りする実証活動」があると考えています。多くの企業が実証のフィールドとして豊田市を活用する、オープンラボのようなまちを目指しています。

こうした取り組みを充実させるため、2018年1月、協議会の中に「未来都市研究会」を立ち上げました。中部電力、トヨタ自動車、名古屋大学未来社会創造機構、三菱UFJ銀行、豊田市が参加しています。

研究会では、50年後の社会について議論し、それに基づいてバックキャスト(目標から逆算して現在の計画、戦略を策定する考え方)で当面10年間の具体的なビジョンを描いています。

今後、AIやロボティクスがどんどん進化して、より便利で無駄のない社会になっていくでしょう。そうした時に、人のあり方や人間性はどのように変わっていくのか。研究会では、「人は本来こうあるべき」という原点回帰と、未来志向を両立させる方向性を模索しています。

市内の70%を森林が占める豊田市。紅葉の名所である「香嵐渓(こうらんけい)」や、ライトアップで神秘的な光景を楽しめる氷の滝「稲武地区の氷瀑」などの観光資源がある

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