「AIの首都」シアトルの最前線 人と資金を引き寄せる理由
AIの研究開発で世界の最先端を行き、「AIの首都」とも表現されるワシントン州シアトル。企業・大学・スタートアップによるエコシステムはどのように形成されたのか。そして、日本企業にはエコシステムに参画するチャンスはあるのか。
テクノロジーとイノベーションの聖地と言えば、シリコンバレーを思い浮かべる人が大半だろう。しかしその常識は崩れつつある。AI関連の研究所やスタートアップが集まるワシントン州シアトルの存在感が急速に高まっているのだ。
「アメリカのエンジニアに対するアンケート調査によれば、『次に生活拠点を移して仕事をしたい都市は』という設問では、シアトルがダントツの1位です。実際、シアトルにはシリコンバレーそして世界中から、続々と人と企業が押し寄せてきています」と話すのは、イノベーション・ファインダーズ・キャピタル(IFC)の江藤哲郎CEOだ。IFCはシアトルと日本を結び、現地企業と日本企業のオープンイノベーションを支援するVCである。
シアトルはボーイング創業の地として航空宇宙産業クラスターが形成され、コストコやスターバックスなどの小売業も本社を置く。そして1990年台以降はマイクロソフトやアマゾンなどのIT企業が大きく成長してきた。2015年のデータでは、シアトルのIT産業従事者は約17万5,000人と、航空宇宙産業を上回る。
近年では、グーグルやセールスフォース、メルセデス・ベンツ、Uberなど多くのグローバルブランドがAI関連の研究開発拠点をシアトルに設立。続々とAIスタートアップがシアトルから生まれ、それらを支援するVCやインキュベータの活動も活発である。
アマゾンとマイクロソフトの支援
シアトルのAIエコシステムはどのように形成されてきたのだろうか。江藤氏はいくつかの要因を挙げる。
最大の要因は、クラウドサービスとAIエンジンで世界1・2位を占めるアマゾンとマイクロソフトが、AIスタートアップの支援と囲い込みを強力に推進していることだ。
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