北海道・高橋知事 アイヌの精神を継ぐ、未来志向の社会づくり

平昌オリンピック・パラリンピックにどさんこ選手を72名輩出するなど、多様な人材が活躍する北海道。「北海道命名150年」を迎えた今、アイヌ文化をはじめとする原点を再確認しつつ、次の50年、100年を見据え、地域創生や人づくり、世界との繋がり強化を軸とする、新たな一歩を踏み出した。

高橋 はるみ(北海道知事)

―― 北海道は命名150年という節目を迎えました。

世の中的には、明治維新150周年ということで盛り上がっていると理解しておりますが、私ども北海道も、1869年に「北海道」と命名されてから150年という節目にあたります。今年1年間は、「北海道命名150年」をお祝いする様々な事業を展開していきたいと思っております。

北海道は150年に至るまでの歴史も大変ユニークでありまして、弥生文化、いわゆる農耕文化を経ることなく、縄文文化から擦文文化、そして日本国の先住民族であるアイヌの人々が営んできたアイヌ文化などを経て、明治に至ったという歴史があります。このような北海道独自の歴史や文化、あるいは国内外に誇る豊かな自然環境は、道民の精神的な豊かさの源にもなっており、「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産を目指しているところでございます。このユニークな北海道の歴史の中においても、アイヌの人たちの自然に対する畏敬の心や共生への思想を含めた位置づけを、改めて認識していくことを一つのポイントにしているからです。

北海道はかつて「蝦夷地」と呼ばれていました。それを、「北海道」と名付けたのは現在の三重県松阪市の出身である松浦武四郎氏です。松浦氏は、当時の蝦夷地を計6度も探検されたのですが、この広大な北海道の大地、厳しい自然環境の中にあって、それは大変なものがあったのではないでしょうか。そのような中、松浦氏の探検をサポートしたのはアイヌの人たちだったのです。さらに、広大な北海道の自然環境をしっかりと維持をしながら、それを守って来てくださったのもアイヌの方たちでした。そういう歴史があったにも関わらず、15世紀頃には、和人が本州などから北海道に入ってきて、開拓が進められ、北海道の近代化がなされる過程で、先住民族であるアイヌの人たちに対するいわれのない差別や低賃金労働、伝統的な生業の制限などにより貧窮を余儀なくされるなど、大変に反省すべきことを多々行ってきたという歴史的な事実があります。一方で、明治期以降においては、全国各地から移住された方々の大きなご努力などがあり、今の北海道の礎が築かれました。

そういったことを含めて、北海道は命名150年という大きな節目の中で、アイヌの方々を含む民族の共生を心に深く留め、これからの50年、100年先の北海道を見据え、世界の中で輝く地域となるように、道民の皆さんや企業・団体・市町村の方々と一体となり北海道を盛り上げる、そういうきっかけになる多様性尊重の社会づくりに取り組もうと思っているところです。

これをSDGsの観点からみれば、この自然環境の素晴らしい北海道の多様な魅力と、先人から受け継いだ財産を次の世代につないで持続可能な社会、開発目標を実現していくということでは、まさに北海道が取り組もうとしてきたことに近いものだと思います。

「北海道の名付け親」である松浦武四郎

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