観光協会やDMOに不足する「予約機能」 JTBが構築支援

若者や訪日旅行者が求めているのは、その場ならではの特別な体験だ。旅行前から家に帰るまでの顧客体験を把握し、訪問者拡大につなげる方策をJTBが紹介した。

山下真輝 JTB 国内事業本部 法人事業部観光戦略チーム 観光立国推進担当マネージャー日本版DMOサポート室 室長

観光産業が成長し、2020年に国内と訪日外国人の旅行消費額を合わせて29兆円とする、という政府の目標を達成するためには、新しい需要の掘り起こしが不可欠だ。観光産業は、今、国内外の人々が観光に求めているもの把握しているだろうか? JTB国内事業本部法人事業部観光戦略チーム観光立国推進担当マネージャーの山下真輝氏は、顧客視点の観光マーケティングについて、2018年1月29日のDMO全国フォーラムで話した。

顧客の体験をトータルに把握

「国内の若年層は、体験や絆などを旅行の際にも重視する。八ヶ岳のスノーシューのツアーや、恩納村のスタンドアップパドルが人気を集める背景には、このようなアクティビティに対する若者のニーズがある」と山下氏は紹介した。このため、重要となるのはCRM(顧客関係管理)ならぬCEM(Customer Experience Management -顧客体験管理)の視点だ。感動や心地よさを含む体験を提供するためには、そのプロセスの全体をデザインし、最適化しなければならない。

そこでJTBでは、カスタマージャーニーマップを作成するワークショップをDMOや観光事業者向けに開催している。旅行の全過程、すなわち旅行先の選定から予約、出発準備から、移動、宿泊、帰宅、そして思い出の共有や他人への推奨などにおいて、どのような行動を顧客が取り、どのような方法で旅行業界側と接点を持つのか。それにより顧客の感情がどのように変化し、その対応策や施策案は何か、というポイントをすべてリストアップして考えていくものだ。「様々な施策の評価指標(KPI)を考える際などに、カスタマージャーニーは有効に利用できる」と山下氏は言う。

このような顧客分析を行うと、魅力ある観光地づくりに必要なのは、「体験」であることが明らかになる。人々は、そこでしかできない特別な体験を求めて旅行に出るのだ。「特別な体験」を提供する着地型の商品では、観光協会や自治体、DMOが提供の窓口の役割を果たすことが期待される。だが、これらの組織のウェブサイトは、情報提供のみで、予約はできないケースが多い。「これはチャンスを逃しているのではないか、ということで、『エリアゲート』システムの提供を始めた」と山下氏は同サービスの背景を説明する。エリアゲートでは、サイトにウィジェット機能を追加、API連携させるなどの方法により、旅行コンテンツを提供しているサービスを介した商品の予約が可能になる。特別なシステム構築なしで、観光協会やDMOのサイトから、JTBやasoview!などの連携サービスを介して、観光アクティビティの予約ができるようになるのだ。手数料収入を得られるほか、購入者属性や販売情報などのデータが取得できる点が観光協会・DMOにとっては魅力となる。地域マーケティングの分析や、改善活動につなげることができるからだ。

「体験プログラムを新しく始めたい事業者向けに、ゼロから開発するパッケージも提供しており、好評を得ている」と山下氏は話す。コンテンツを作成する際には、地元のウェブ制作会社や広告代理店と協力し、カスタマージャーニーマップの作成から一緒に行うケースもある。システムの提供にとどまらず、それを運用できる体制を地域で育てていく考えだ。

 

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