CSV経営を広報でサポート キリングループの戦略

藤原 哲也(キリン 執行役員CSV本部コーポレートコミュニケーション部長)

CSV経営へ理解促す

上野:コミュニケーション機能とブランド構築の機能をCSV(CreatingShared Value=共有価値の創造)という形でくくりました。これは先駆的な試みですね。少なくとも当時の日本の社会では、CSVは認知されていなかったと思います。

藤原:キリングループのCSVは東日本大震災の被災地の復興支援から始まりました。CSVを経営の中心に据えると初めて表明したのは2013年です。「健康」「地域社会への貢献」「環境」といった我々の事業に関連性の高い領域を決めて、キリングループCSVコミットメントを策定しました。「47都道府県の一番搾り」プロジェクトはそこから生まれたものです。

上野:CSRの一環としての社会貢献活動は、一般的にあまり事業色は出さないことが多いですが、キリンの場合は、事業戦略に含まれていますね。

藤原:CSV推進部と一緒に、ステークホルダーごとにテーマを決めてコミュニケーションプランを練っています。最近は、ESG(環境、社会、ガバナンス)を重視する動きを受け、投資家にはCSVを前面に出しています。お客さまには各工場の地域での取り組みを通して、「ああ、あれがCSVなのか」と、後で気づいてもらうのが理想です。社内向けには、CSV推進部がインターナルコミュニケーションを担っています。CSVは経営の根幹なので、社長取材を受ける時は必ずCSVの考え方を伝えるようにしています。

《聞き手》
社会情報大学院大学 学長 上野征洋氏

広報もIRも根本は同じ

上野:「ブランドを基軸とした経営」を掲げていますが、企業価値を高めるためのステークホルダーとのコミュニケーションについてどうお考えですか。

藤原:事業会社と持株会社にかかわっていますが、役割がそれぞれ若干異なります。事業会社は消費者が主なステークホルダーなので、ブランド価値を高めることが重要。一方、持株会社は、企業価値そのものを高めたい。キリンでは事業会社をサポートして、ブランドを基軸とした経営でブランド価値を向上させ、その結果「キリン」という企業価値を高めていくという役割を担っています。持株会社になると、投資家に対して企業価値を上げていくということになります。

上野:常に事業価値から企業価値へのスライドを意識しているのでしょうね。

藤原:そうですね。発信する情報は基本的には同じで、広報とIRでシナリオを作成し、見せ方を変えるようにしています。

四半期ごとに開かれる各事業会社の経営戦略会議では、広報活動について説明する時間をとっています。そこで事業会社の社長以下役員と共通課題が認識され、次の経営戦略会議でどこまで課題が解決したか評価してもらいます。この取り組みを始めてから、マーケティング部や営業部などいろいろな部署から声がかかるようになり、新しい取り組みが生まれています。

 

藤原 哲也(ふじわら・てつや)
キリン 執行役員CSV本部コーポレートコミュニケーション部長

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