2017年6月号

構想を実現する戦略広報

情報は常に公開する覚悟がある~トップに聞く有事の広報対応~

伊東 信一郎(ANAホールディングス 取締役会長)

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増資に株主の理解求める

ANAホールディングス 取締役会長 伊東信一郎氏

《聞き手》社会情報大学院大学 学長 上野征洋氏

上野:伊東会長は2009年4月に全日本空輸の社長に就任されました。リーマン・ショックの翌年という、逆風下でのトップ交代でしたね。

伊東:苦しい時期でした。旅客需要は激減し、2009年度は史上最悪の決算を記録しました。本当に厳しい状況でしたが、情報を開示して従業員と危機感を共有し、創業者の言葉である「現在窮乏、将来有望」を合い言葉に、何とか乗り切りました。

上野:LCC(格安航空会社)が台頭した時期でもありました。ANAグループも参入しましたね。

伊東:関西国際空港を拠点とするピーチ・アビエーションを立ち上げたほか、成田国際空港を拠点にエアアジア(本社・マレーシア)との合弁会社を設立しました。ともに2012年のことです。海外LCCの日本進出が想定される中、攻めの姿勢こそ最大の防御だと考えたのです。今は関空でピーチ、成田では100%出資のバニラ・エアがそれぞれ運航しています。

上野:社内の声はいかがでしたか。

伊東:当初はLCC導入を危惧する声が多く挙がりましたが、それ以上に新たな需要を掘り起こしました。ANAブランドに比べて、特に若い女性とシニアの比率が高くなっています。

有事の際ほど「オープン」に

上野:機内はコミュニケーション空間でもあります。客室乗務員さんの気遣いによって、乗客が信頼感や好意を持つようなこともあると思います。

伊東:「あんしん、あったか、あかるく元気!」が我々のサービスのモットーです。マニュアルに縛られすぎない、人間味のあるサービスが理想です。

上野:広報活動についてはどう見ていますか。

伊東:2つの側面があります。ステークホルダーとの信頼関係を築くための日常の広報活動と、リスクマネジメントです。有事の際、我々は「常に情報を公開する」覚悟があります。

2013年にボーイング787型機のバッテリーの不具合問題が起きた時には、約4カ月にわたって同機の使用を止めました。ボーイング社はその必要はないとの見解でした。実際のところ、止めなくても良かったのかもしれません。しかし、安全に飛ばすには原因究明は必要だと判断しました。

もっとも、飛行機を止めることは大幅減収につながりますから、止める理由を、技術的な面も含めて説明しなければなりませんでした。ステークホルダーの方々にお詫びをする、メディアに対する詳しい説明の場を設ける、ウェブサイト上でご説明する、といったことです。完璧ではありませんでしたが、広報は頑張ってくれました。

上野:透明性を保つことで安全性を担保していくという姿勢は大事ですね。結果として、信頼を得ることにつながったのではないでしょうか。

伊東 信一郎(いとう・しんいちろう)
ANAホールディングス 取締役会長
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