株式譲渡の重要ポイント:会計帳簿に表れないリスク検証

前回に引き続き提携の話題の中から、事業を会社ごと譲り受ける場面の中でも代表的な方法の一つである、株式譲渡における法務的に重要なポイントについて取り上げたいと思う。

株式譲渡の方法による事業の取得とは

株式譲渡の方法により、事業を譲り受けるというのは、ある株式会社の株式を譲り受けて、その株主となることによって、その株式会社が行っている事業を譲り受けるという方法である。通常は、事業を行おうとしている人が株式の全部を譲り受けるので、その譲り受けた人は、その株式会社の全部の株式を持つ株主となり、自分を代表取締役として事業を行っていくことになる。

株式譲渡の方法で事業を譲り受ける場合に、最も重要な点は、その会社の株主となるわけであるから、会社を丸ごと引き受けるということになるという点である。つまり、その会社の資産をもとより、負債も承継するということである。

そのために、会計の専門家を入れて財務内容を検証し、さらには弁護士を入れて法的にリスクがないか、最も重要なことは会計帳簿に表れないリスクがないかどうかを検証するのが通常である。これが「デューデリジェンス」と言われるもので、「デューデリ」「DD」などと略称され、会計面におけるものを会計DD、法務面におけるものを法務DDなどと呼ばれる。

法務DDは、法的なリスクが生じているものがあるかの検証のためという理由の他にも、その会社が法的に整備しなければならない問題点を発見し、その整備のためにどのくらいのコストがかかるのかといった見通しを立てるという点でも重要である。

法務DDとはどのようなものか

法務DDではどのようなことが行われるのか。対象となる事項を大きく分類すると、一般的には、会社の組織に関する事項、資産に関する事項、借入に関する事項、取引に関する事項、労務に関する事項、紛争に関する事項ということになる。

実際には弁護士がこれらの検証を行うため、細かい知識を持っている必要はないが、着眼点も含め、以下の点については概要を認識しておくことが有益と思われる。

会社の組織に関する事項というのは、資本構成、株主や役員に関する事柄、議事録、内部の規則の状況などであり、先ほど言った法的なリスクがないかという観点から特に重要なものが、取締役会などの経営幹部による会議の議事録の調査である。経営幹部による会議の議事録には、そのときに何か問題となっている事項に関する議事や発言などが記載されていることがあり、それをきっかけとしてその会社の法的なリスクを探索することができる。

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