2015年10月号

外国人を呼び込む 観光・移住のインバウンド市場

地方の変化が観光立国を推進

本保芳明(首都大学東京 教授)

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日本の縮図でもある地域には、観光の魅力やインフラは十分にある。来訪者を増やし、地域を活性化させるためには何が必要なのか。初代観光庁長官で、現在は東京工業大学特任教授の本保芳明氏に聞いた。

熱気あふれる2014年のツーリズムEXPOジャパンの会場

日本は基盤となるような観光の魅力やインフラは十分にあります。国内観光は大変発達しています。しかし、インバウンドは立ち遅れていました。基盤が揃い、ビジネスの仕組みがあり、プロモーションができて、結果としてサービスが立ち上がっていく構造になっていないといけないのですが、日本の魅力を伝えるプロモーションや、外国人のニーズに合わせたサービスの提供の部分において、国際的基準に合致しておらず、日本全体が立ち遅れてきました。地域は、さらに国よりも1歩から2歩遅れているというのが大きな構図ではないでしょうか。

もう一つ、この構図につけ加えるのは、日本人の観光、つまり国内旅行と海外旅行が落ち込んでいる状況です。インバウンドについては、ながらく取り組みをしてこなかったため出遅れています。国内旅行は、進んではいるが陳腐化し、時代遅れになってしまっています。2008年に観光庁ができて、システム構築を進め、ノウハウを蓄積し、人材も育成してきていはいますが、まだまだ底が浅い状況で、日本の観光の弱みと言えます。しかしながら、日本にも強みがあります。

それは、産官、もしくは産官学で連携して取り組みができる点です。ツーリズムEXPOジャパンは、その象徴的な一つの表れです。産業界が横の連携をとり、観光産業の枠を超えた取り組み、産との連携、官との連携をとるような動きにより、キャッチアップが比較的早くできる強みがあります。

本保芳明(首都大学東京教授)

金太郎飴的な対応では外国人観光客は誘客できない

地方は観光立国推進の主役になるポテンシャルはありますが、それを発揮する為には工夫と努力を重ねることが必要です。日本人と外国人向けの観光での一番の違いは、需要の多様性です。海外から訪れる観光客は、人種、宗教、文化、経済水準など極めて多様であり、大変複雑なセグメントで構成されています。それに、どう応えていくかがポイントになります。金太郎飴的な対応では誘客することはできません。

基本的なルールは外さず、地域の持っている魅力を提供する工夫や仕組みを提供できれば、大きな力を発揮できます。ニーズに応える、というのは非常に知的レベルの高い、難しい作業です。情緒的で独りよがりではいけません。ニーズを科学的に捉え、創造的な取り組みをしていくことが強く必要とされています。インバウンドは、マンネリ化でサービス改革が遅れ、面白さに欠けている国内旅行にとっても、変革をもたらしてくれるのではないでしょうか。

自治体は人材が活躍できる仕組み、体制が必要

もう一つ着目しなくてはいけない点は、観光産業で終わらない、ということです。観光はサービスを輸出しているのです。それは日本や地域のブランドを作り上げる、ということであり、そのブランドづくりを通じて、他の産品、プロダクツをいかに輸出につなげていくか、がポイントとなります。観光産業を本当の意味で国、地域のビジネスにしていくには、観光を通じて作られるブランドを、日本のブランド全体の向上につなげ、産品の輸出につなげていく、これをどれだけできるかということが非常に大きな問いかけになると思います。

日本全体、地域全体を見渡せば、観光産業を発達させるための必要な人材はいます。いかにして、素質や専門知識を持った人材を結集して、人材として組織として活用できるかということが多くの地域では課題となっているのではないでしょうか。人材と組織を、使いこなすシステムや仕組み、体制が、受け入れる自治体側に出来上がっていない点が大きな課題です。背景も文化も能力も異なる人材を受け入れ、力を最大限に発揮できる仕組みを作ってあげ、皆が耳を傾け、一緒に働いてくれる体制を整えないといけません。

観光のレベルを上げ国際的認知を高める顕彰事業

ツーリズムEXPOジャパンで賞を出すことに関していくつか意義があります。日本観光振興協会、JATA、JNTOの3団体が、一つの共通の価値体系を作っていくということです。賞を与える側はそれにふさわしい姿を選考し、観光のあるべき姿、観光産業への貢献とは何か、観光産業で働く意義は何か、などの点について、3つの主体が統一的な思想を形成していくことで、顕彰自体が高い価値を持ちます。これを通じて、産業界のモチベーションを上げ、より高いレベルでの活動をするきっかけになることが期待されます。

また、国際機関である国連世界観光機関(UNWTO)と連携した顕彰であり、日本の観光界がグローバルな活動をしているシンボルになります。日本の観光による国際的な貢献を通じて、国際的な認知を高め、日本の観光の発展につなげていく、という発想で国際連携を強化してきた成果として、この賞ができました。この顕彰事業の発想の原点には、サステナビリティ(継続可能性)とレスポンシビリティ(責任)があり、観光産業が発展し、栄えていくための様々な活動の原理原則となっています。

9月24日のツーリズムEXPOジャパンでの、表彰に向けて選考が始まっていて、それに立ち会っていますが、日本の観光産業は、きちんとした仕事をしている企業が多いです。環境、社会貢献、など様々な意味での社会的、普遍的な価値を重視して行動している企業が少なくありません。もっと世界に知られて良いと思います。ぜひ、アワードに期待してもらいたいと思います。

昨年の基調シンポジウムの様子

本保芳明(ほんぽ・よしあき)
首都大学東京 教授
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