2015年1月号

社会イノベーションの起こし方

地方創生は観光力で 日本発、世界最大の「旅の祭典」を目指す

見並 陽一(日本観光振興協会 理事長)

2
​ ​ ​

2014年9月、日本観光振興協会と日本旅行業協会の主催で「ツーリズムEXPOジャパン」が開催された。世界最大級の旅の祭典をキャッチフレーズに行われた展示会には16万人弱の来場者が訪れ、フォーラム、商談会なども行われ、おおいに盛り上がった。

国内外から多くの人が来場した

会場で地球規模の交流を

ツーリズムEXPOジャパンは、「旅フェア」と「JATA旅博」を統合し、この9月、新たな展示会として初開催した。

日本観光振興協会の見並陽一理事長は、「これまで個別にプロモーションしてきた海外旅行、国内旅行、訪日旅行を一つに集結したことで、より観光に注目してもらうようなプロジェクトができたと感じています」と話す。

展示会は大きく4つの要素で構成された。日本文化を紹介する前夜祭、商談会を含む展示ブース、観光フォーラム、観光に尽力した個人・団体を表彰する顕彰事業だ。

メーンの展示会場には、国内47都道府県、海外は欧米、アジア、南米など150以上の国と地域から1500以上のブースが集結。来場者は15万7589人にのぼり、国連世界観光機関(UNWTO)のタレブ・リファイ事務局長を基調講演に迎えた観光フォーラムも約1000人の出席者で賑わい、初開催としては大成功と言える。

「観光は、双方向の交流を活性化させることで初めて成立します」。国内旅行でも、海外旅行でも、観光に来てもらうためには、相手の国、土地の風土や文化を知る必要がある。「国内外のブースが一同に集まった展示会場で、お互いのブースを表敬し合うことが、地球規模の交流になっているのです」。

多くの人で賑わう会場、日本文化を紹介する前夜祭や顕彰イベントも開催された

優秀な人材を地方に

「国の進める地方創生において、観光は大きなカギとなります」。

地方の活性化を考える時、そこに雇用が発生し、ビジネスが成立する必要がある。イベントなどの一過性のものではなく、地域独自の文化を基軸とし長い目で地域の活性化をはかるには、観光は大きな力となる。

「観光に必要なのは、地域にもともとある資源や文化をオーガナイズ、マーケティング、マネジメントして、魅力あるものに仕上げていく能力です」。

見並 陽一 日本観光振興協会 理事長

地域が独自の資源を商品化して発信し、観光客を呼び込むためには、旅館、土産物屋といった縦割りの組織ではなく、多種多様な業種が連携した横断的な組織が必要だ。欧米では、地域における観光振興マネジメントを担う組織として、DMO(Destination Marketing/Management Organaization)があるが、日本でもそうした組織の普及が重要となる。日本観光振興協会では、地域におけるDMOのような組織づくりを推進、応援し、同時にそうした組織で能力を発揮できる人材育成に力を入れている。

地域全体を商品化し発信していくためには、プロモーション、マーケティング、マーチャンダイジングなどが必要だ。観光領域に第一線のサービスだけでない能力が必要となれば、能力のある若い世代の活躍の場、自己実現の場が生まれる。

「DMO的な組織を地方に作ることによって、東京に集中しがちな優秀な人材を地方に呼び込むことができます」。

心を動かす仕掛けづくり

日本人、外国人問わず、いま観光客が求めているのは、物理的なものを見る物見遊山的な旅ではなく、その土地の文化や歴史に触れる、その土地に暮らす人に触れるといった、心で感じる旅だ。

例えば、外国人観光客が日本に来て富士山を見る時、富士山が美しいというのと同時に、日本人が古くから重んじてきた富士山信仰に触れたいと思う人もいる。

そうしたソフトの部分、何もないところにどう光を当て、訴えていくかが、今後の観光地づくりには必要になる。「地方に何があるかと言えば、何もないのです。でも、その土地の人が何でもないと思っているものや風景に、外の人は心動かされるものです。そんな心の動きを触発するようなストーリーが出来れば、何もないところに観光客を呼び込み、地域を活性化していくことができるのです」。

悠大な川や深い森、山間の集落に落ちる夕日、昔の面影を残す建築物、そこで暮らす住民、そうしたものに触れることで、観光客はその土地の力に触れることができる。「旅というのは極めて哲学的なものです。哲学を生活中に生かす手段が旅なのです」。普段とは違う風景、時間の流れの中でふと立ち止まって物思いにふける。これも、心で感じる旅のひとつ。「立ち止まるためには、そこにベンチがいります。これが町づくり、観光地づくり。人の心を動かす仕掛けづくりが重要です」。

世界の観光のトップクラスの人材が集うフォーラム。1,000人以上が出席した

オリンピックイヤー後を見据えて

地域の魅力の発掘やブラッシュアップ、多業種が広域に連携しての組織づくり、そうした組織を管理運営できる人材の育成。観光に対するこうした取り組みは、一朝一夕にはできない。日本観光振興協会では、2020年以降を見据えて、一歩一歩、取り組みを進めている。

「オリンピックイヤー後に日本に来たいと思う観光客に対し、きちんとしたおもてなしができる体制を各地に整備しておくことが重要です。オールジャパン、オールエリアで、修練された〈おもてなし〉を提供できる体制をいかに作るか。その大きなスタートがツーリズムEXPOジャパンです」。

今回は「世界最大級の旅の祭典」をキャッチコピーにしたが、次回以降は最大級の〈級〉を取り、〈世界最大〉をめざしていくという。

「ツーリズムEXPOジャパンへ行くと、世界の観光の潮流が分かる。世界の観光に関わるトップクラスの人材が集う場づくりをしていきたいと思っています」。

その大きな柱となるのがフォーラムだ。観光の持つ力は、経済的な利益や地域の活性化だけにとどまらない。「観光、旅には、人間を再生させる力があります。生活、人生を回復する一つの大きな手段として観光、旅がある」。観光の本質を国内外へ発信する意味でも、世界トップクラスの人材が集い、議論を交わすフォーラムという場は重要だ。今後は、フォーラム事業拡大とともに、展示ブースのさらなる充実、顕彰事業なども合わせてスパイラル的な成長をめざす。

ツーリズムEXPOジャパンが、名実ともに「世界最大の旅の祭典」となることが、日本の観光力を総合的に上げる大きなきっかけ、エンジンとなる。

見並陽一(みなみ・よういち)
日本観光振興協会 理事長

新事業のアイデアを考え構想する
社会人向けの事業構想大学院大学 詳細はこちら
2
​ ​ ​

バックナンバー

社風が変わる、イノベーターが育つ

地方創生・イノベーションにつながるアイデアと思考に注目!

志高い、ビジネスパーソン・行政・NPO職員・起業家が理想の事業を構想し、それを実現していくのに役立つ情報を提供する、実践的メディア。

メルマガで記事を受け取る

メルマガ会員限定で、
ピックアップしたオンライン記事を
毎日お届けします。

メルマガの設定・解除はいつでも簡単

バックナンバー検索

売り切れ続出注目のバックナンバーはこちら


最新情報をチェック。

会員になると 最新「事業構想」が読み放題。さらに

会員の特典をもっとみる