2014年9月号

社会イノベーションの起こし方

東京五輪が先端ITのショーケースに 自民党・平井卓也議員の構想

平井卓也(衆議院議員、自民党IT戦略特命委員長)

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2020年夏、東京で待望のオリンピック・パラリンピックが開催される。総経済効果19.4兆円、GDPは毎年0.3%上昇、総雇用は121万人にのぼると予想される。東京オリンピックは、まさにビジネスイノベーションの大いなるゆりかごとなるだろう。

平井 卓也 衆議院議員、自民党IT戦略特命委員会委員長

東京五輪を先端ITのショーケースに

まずは、オリンピック・パラリンピックイヤーのITイノベーションを国家政策として考える、自民党IT戦略特命委員会委員長の平井卓也衆議院議員に、事業構想大学院大学の岸波宗洋准教授がお話を伺った。

未来の都市像を世界に

岸波 自民党・IT戦略特命委員会は6月、提言書「デジタル・ニッポン2014」をまとめました。2020年に向けたITイノベーションの狙いはなんでしょうか。

平井 提言書では、2020年までに「おもてなし」や「思いやり」、「おせっかい」を、最先端のITでどう実現するか、政策を検討・整理しています。さまざまなイノベーションのアイデアを盛り込み、世界最先端IT国家の具体的な姿を描きました。2020年のオリンピック・パラリンピックは、世界に向けた日本のビジネスショーケースにしたいと考えています。

東京五輪ではスタジアムはもとより日本全国を先端IT技術のショーケースにする。

例えば、富士山の上に光ファイバーを整備して動画配信してもらったり、ITを起点とした多様なイノベーションを内外に発信していきたいところです。政府が我々IT戦略特命委員会の提言を受けて、予算をつけていく形がとれれば、様々なビジネスアイデアが実現できるでしょう。法律改正は特に不要で、すぐ取り掛かれるものを優先していきます。

岸波 オリンピック・パラリンピックおよび2020年のビジネスに対して、竹中平蔵氏(国家戦略特区諮問会議)の言うようなオリンピック特区の必要性や優遇措置についてどのようにお考えですか。

平井 構造改革、総合、国家戦略の3つの特区がいままでありますが、その根底には、日本が新しいことを行うには規制が多い、フロントランナーを作ることができないという面がありました。しかし今は、特区にせずとも、自治体が「こうありたい」という姿を示せば、実現する手段は沢山あります。ただ、国がある地域を「こうせよ」、というのは地方分権の形としてもおかしい。地域に住む人や行政が、自分たちの将来をどう作りたいか、という所から入ることに意味があるのだろうと思います。IR法案(カジノ併設型複合リゾート施設整備を促す法案)はその最たるもので、臨時国会で基本法が成立する見通しですが、これは地域が自由に手を挙げて良いよ、という法案です。主役はあくまで自治体であると。

ウェアラブル端末を使った観光ガイドや、自動交通システムなども実現するかもしれない。

地方自治体への期待セキュリティ産業にも注目

岸波 オリンピック・パラリンピックビジネスに対して、各自治体の積極的な関わりは必須ということですか。

平井 まず、東京都にはがんばってほしいところです。それと連動するように、五輪を東京都だけのものにせず、例えば大阪がそれまでにカジノを作ろうとしているように、地方自治体も新しい都市モデルを関連づけて考えることが大事です。商店街活性化から福祉特区まで色々なものが出てきます。独自の考え方を持った自治体が、条例を整備して取り組む、そんな時代になったのではないでしょうか。

岸波 その意味では、まさにIR法は自治体・民間企業の有機的な結合を促す法案ですね。

平井 一般的なIRの場合、全敷地に占めるカジノの割合は5%未満です。つまり、カジノが主役のように言われますが、実際は異なり、海外に窓を開いた集約的な施設です。USJのようなもので、それを作りたい自治体は当然あるだろうと思います。

岸波 前号(8月号)でお伺いしたサイバーセキュリティ分野でも、オリンピック・パラリンピックイヤーまでにすべきことは多々あると思いますが、平井先生が特に注目するイノベーション分野はありますか。

平井 まず、高齢化をITの力でどう解決するか、労働人口が減るハンデをITの利活用でどう克服するかが一点です。もう一点は、サイバーセキュリティが産業化する過程で、コンプライアンスとしての保険業務が成立しないといけないということです。最近起きたベネッセコーポレーションの個人情報漏洩問題のように、変化する時代に対応するリスクの軽減策が、ビジネスチャンスにつながるのではないでしょうか。

岸波 確かに、リスク対応が前提になければ、消費者も企業を信用しない時代ですね。一方、2020年までにサイバーセキュリティ分野で10万人雇用が期待されていますが、前提となる人材創出計画についてお聞かせください。

平井 これは相当予算をつけて実施します。小学校から始まり、各種教育現場、企業内でも当然ありますし、海外の各大学との連携も検討しています。官民あげて取り組むべき課題です。

ちなみに、世界最先端IT国家創造宣言は2020年がターゲットイヤー。これはたまたま、オリンピック・パラリンピックにアウトプットが合致しています。だからこそ、オリンピック・パラリンピックが世界最先端IT国家の姿を示すプレゼンテーションの舞台になり得るのです。

岸波 不動産分野などと違って、IT戦略はオリンピック・パラリンピックがゴールではなく起点であり、その後、真価を問われるということですね。

平井 そのとおりです。オリンピック・パラリンピックを契機としたITの更なる発展を期待しています。

平井卓也議員と事業構想大学院大学・岸波宗洋准教授

2020東京五輪に向けた事業構想の焦点

カウントダウンは始まっている

2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催は、2013年9月にIOCから正式に承認決定されたが、その直後からすでに、ビジネスイノベーションへ向けたカウントダウンは始まっている。最も開発リードタイムが長く投資規模の大きい不動産などインフラビジネスは、決定以前から様々な検討が進んでおり、ロンドン五輪の教訓も十分に学んだ上でイノベーションを画策している。

一方で、特にサービス産業のように最も計画やローンチが柔軟かつ迅速に展開されるべきものとその従事者は、少し遅れをとってはいないだろうか?

日本のGDPの70%(雇用ベース)を占めるサービス産業は、いわば「生産性の低い産業」であり、業務改善やグローバル化、教育体制の確立等、もっともイノベーションを期待しなければならない分野でもある。にもかかわらず、客観的に見る限り、決してスピーディーに組織化や計画化が進んでいない。

時間はない。イノベーション計画に1年を費やせば、残りは、5年もない。事業やサービス開発は1-2年のリードタイムが最低必要であり、ローンチ後のオペレーション改善やマネタイズに係るモデルの変化は必須。となれば、オリンピック・パラリンピック機会のビジネス・キックオフは、まさに「今」である。

自民党・IT戦略特命委員会「デジタル・ニッポン2014」に注目

対談中に平井議員が述べるとおり、2020年=ビジネスショールームを前提としており、人材育成も含め、多様な予算配分によってIT戦略の変革起点とすることを志向している。特に、GDPシェアの高いサービス産業において、そのGDP貢献度を高めるための新たなサービス産業創出に期待するところが大きい。

次世代型サービス産業においてクリティカルポイントとなる「高付加価値」、「情緒価値」を体現するキーワードとして、委員会では「おもてなし」、「おもいやり」、「おせっかい」を標榜している。機能価値をはるかに凌駕した、より高い次元の高付加価値/情緒価値型IT環境を提供し、国内居住者だけでなく海外観光者の新しいライフスタイルを提言していくことになるだろう。

2014年6月に発表された「デジタル・ニッポン2014」は、平井卓也議員が委員長を務めるIT戦略特命委員会で検討されたイノベーション政策の提言書である。2013年9月に東京オリンピック・パラリンピック開催が決定されたことを受けて、新たな経済視点(五輪需要)を加味しており、半世紀ぶりとなる東京オリンピック・パラリンピックを契機としたイノベーションアイデアを網羅している。

提言では、主なビジネスイノベーション分野14の場面にリンクした27の提言について、具体的に企業からヒアリングしたビジネスアイデアを78種リストアップしている。次号以降、詳細を解説していきたい。

平井卓也(ひらい・たくや)
衆議院議員
自民党IT戦略特命委員長
岸波宗洋(きしなみ・むねひろ)
事業構想大学院大学准教授
事業構想研究所教授(兼任)

 

事業構想大学院大学 事業構想研究所

「2020ビジネスイノベーション~オリンピックイヤーの事業構想プロジェクト研究」
研究員募集のご案内

事業構想大学院大学付属研究機関である事業構想研究所では、自民党・IT戦略特命委員会の標榜するデジタル・ニッポン2014の事業構想を支援する「プロジェクト研究」を発足します。参画する自治体・企業の方々を研究員としてお招きし、IT戦略特命委員会・委員長である平井卓也衆議院議員、政治経済評論家谷本龍哉氏、本学教授、一流のゲスト講師が事業構想に取り組んでいきます。「プロジェクト研究」のご案内を希望する皆様には、無料で資料をお送りいたしますので、以下のお問い合わせ先まで、電話、メール、FAXにてご連絡ください。

  1. 事業構想大学院大学 事業構想研究所(担当者:岸波)宛
  2. 電話番号:03-3478-8401
  3. FAX番号:03-3478-8410
  4. メールアドレス:jken@mpd.ac.jp
  5. メールまたはFAXで資料のご請求をされる場合、以下の内容を記入してお送りください。
    ●タイトル「2020プロジェクト研究資料希望」
    ●氏名、住所、電話番号、メールアドレス、会社名(部署名)、役職名
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