2014年8月号

社会イノベーションの起こし方

統合型リゾートを地域観光の切り札に

岩屋毅(衆議院議員)

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今国会で提出されたカジノ併設型複合リゾート施設(IR)整備を促す法案は、観光立国への起爆剤として、また地域活性化の切り札として期待される。IR議連幹事長の岩屋毅衆議院議員に構想を聞いた。
聞き手 政治経済評論家、谷本龍哉氏

 

シンガポールで2010年にオープンしたマリーナベイサンズカジノ。2つのIRの効果で、シンガポールの観光収入は倍増した

谷本 今国会で提出されているカジノ併設型複合リゾート施設整備を促す法案(以下IR法案)は、日本社会に大きな変化をもたらすものと期待されています。

岩屋 IR法案は、国際観光振興を目的とした極めて大きな規制緩和であり、日本が観光立国を目指すための起爆剤です。昨年、日本の外国人観光客数は初めて1000万人を突破しましたが、これはアジアでは8位というポジション。世界的に見ると非常にさびしい数字ですし、まだまだ伸びる余地はあります。

OECD34カ国中でカジノというゲーミングが認められていないのは、日本とノルウェーとアイルランドだけ。日本は特別立法によって競馬、競輪、競艇、オートレース、宝くじ、サッカーくじといったギャンブルが存在し、遊技としてのパチンコもあります。その中でインターナショナルな存在の、ゲーミングだけがない。これは外国人観光客を誘致するにあたり、ディスアドバンテージでしょう。

谷本龍哉 政治経済評論家(元衆議院議員)

谷本 カジノの是非に議論が集中してしまい、IR法案の中身はあまり知られていないようですが、具体的にどのような政策を考えていますか。

岩屋 今国会ではまずIR推進本部を作るための推進法を審議します。法案通過後にその本部が作った実施法を国会で審議し、それから初めてIRの整備が始まります。推進法成立後3カ月以内に本部を設置し、1年以内に実施法を制定するスケジュール感です。

事業モデルとしては、民間事業者にライセンスを与え運営させる方式が考えられます。早ければ来年にも、IR設置地域の選定や事業者審査が始まるでしょう。政府は東京オリンピックの2020年に外国人観光客数2000万人達成を掲げていますが、これと足並みをそろえてIRをオープンさせたいと考えています。

2兆円規模の投資を期待

谷本 シンガポールでは2010年に2つのIRができ、観光収入が倍近くに伸びたと聞きます。日本の場合、どの程度の経済効果が見込まれますか。

岩屋 投資の面を見ればシンガポールの場合、2カ所で約9,000億円がなされています。日本は国内外からその倍の投資が行われると思います。IRを起点に発生する経済効果は、規模と立地によって変わってきますが、GDPの1%程度を期待しています。雇用面でも10万人規模の効果が見込めるのではないでしょうか。

谷本 IRにはカジノ以外にどのような施設が想定できますか。

岩屋毅 衆議院議員

岩屋 これもシンガポールの例が一番参考になると思いますが、2カ所のIRで全敷地面積に対するカジノの割合は3%以下となっています。その他にはホテル、シアター、ショッピングゾーン、レストラン街、遊園地、水族館などが整備されています。これらが集客力、収益力のあるカジノと共存し、採算性を高めるというビジネスモデルです。

海外のIRは、外国人観光客向けという施設もありますが、日本の場合、自国民も楽しめるファミリーディスティネーションを目指すべきだと思います。とは言え、自国民に限って入場料を課すなどの、一定の抑止策も必要でしょう。

谷本 IR設置には反対意見も根強くあります。例えばギャンブル依存症の問題、勤労意欲の低下などについてはいかがですか。

岩屋 IRにより懸念される事項は、組織運営に対する社会悪の関与、青少年への悪影響、治安悪化、依存症の問題、以上の4つに大きく分けられます。

社会悪については、強い権限を持った独立性の高い外部の管理委員会を作り、すべての出入り業者に対して徹底的にチェックを行うことで、反社会的組織が介入する余地をなくします。また治安については、むしろ近代的なIRが誕生したことで地域の治安が改善したという事例が世界的に多く見られています。

依存症をゼロにすることは困難ですが、これはギャンブル全般に言える課題です。IR収益の一部を使ってギャンブル依存症の調査、対策、抑止、治療にしっかりと取り組んでいくべきだと考えます。

地域に求められる発想日本ならではのIRを

谷本 懸念事項はあるにせよ、IRが日本全体に及ぼす経済効果は非常に大きいと言えます。地域活性化にも効果がありそうですね。

岩屋 これは政府が決めることですが、大都市に限らずIRは地方にあってもいいと思っています。日本は小さな島国ながら豊かな観光資源に恵まれています。例えば、温泉や雪を楽しめるウィンターリゾートIRがあってもいい。歌舞伎などの文化・伝統芸能のステージや、AKB48やアニメ、ファッションなどのクールジャパンとの連携も考えられます。IRがハブとなり、外国人観光客が日本全国を周遊する。このように、IRがビジットジャパンとエンタテインメントの発信基地になってほしいですね。

谷本 地方自治体や民間企業の構想力が重要になりますね。

岩屋 その通りです。日本にふさわしい、特色のあるIRを作るには、世界的な経験を持つIR事業者だけでなく、国内の幅広い事業者の知見が必要です。地域によっては行政や経済界などが中心となり、勉強会やビジョン作りを始めたところもあります。自分たちの地域はどういうIRを目指すのか、そのビジョンを自治体がしっかりと示せば、国内外から叡智が結集してくるでしょう。

岩屋毅(いわや・たけし)
衆議院議員
1957年生まれ。早稲田大学政経学部政治学科卒業後、代議士秘書に。87年大分県議会議員、90年に自由民主党から衆議院議員選に出馬し初当選。現在6期目。自民党安全保障調査会長、超党派の国際観光産業振興議員連盟(通称IR議連)幹事長などを務める。
谷本龍哉(たにもと・たつや)
政治経済評論家(元衆議院議員)
1966年生まれ。東京大学法学部卒業後、二階俊博氏秘書、和歌山県議会議員を経て、2000年衆議院議員初当選。内閣府副大臣などを歴任。政界引退後は評論家、経営者として活躍中。

「統合型リゾート~地域と観光とビジネスの創生を図るプロジェクト研究」
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事業構想大学院大学の付属研究機関である事業構想研究所では、IR法案により地域活性化/統合型リゾートを推進する「プロジェクト研究」を発足します。参画する自治体/企業の方々を研究員としてお招きし、IR法起案者である岩屋毅衆議院議員、政治経済評論家谷本龍哉氏、本学教授、一流のゲスト講師がIR法を起点とした事業構想に取り組んでいきます。「プロジェクト研究」のご案内を希望する皆様には、無料で資料をお送りいたしますので、以下のお問い合わせ先まで、電話、メール、FAXにてお問い合わせください。

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  2. 電話番号 : 03-3478-8401
  3. FAX番号 : 03-3478-8410
  4. メールアドレス : jken@mpd.ac.jp
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