観光マーケティングを変えるDMO

2003年、小泉政権下で「観光立国宣言」がなされてから10年。団体型から個人型へ旅や観光のスタイルが変化する中、観光まちづくりに求められる新しい発想と視点とは―。事業構想大学院大学客員教授・瀧本徹氏(元観光庁)が、観光マーケティングの専門家である大社充氏に「観光まちづくり」の現状と課題を聞く。

観光客数伸び悩み 原因は地域の体制

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大社充(おおこそ・みつる)
NPO法人グローバルキャンパス理事長・日本観光振興協会理事・観光地域づくりプラットフォーム(日本版DMO)推進機構代表理事。1961年1月生。京都大学卒。日本観光振興協会内に「DMO研究会」を立ち上げ普及・導入に取り組む。著書『体験交流型ツーリズムの手法』『地域プラットフォームによる観光まちづくり』ほか

瀧本 「観光立国」の宣言から10年。日本において、観光による地域の活性化は一つの主要なテーマとなっています。こうした取り組みに関して、現状、どのような課題がありますか。

大社 日本では、バブルの頃をピークに全国的に観光客数は伸び悩んでいます。人口減少が進むことで地域経済が縮小していく厳しい環境の中、観光振興の推進は重要な政策課題となっています。

伸び悩みの原因は、地域の体制にあるのではないかと思います。地域ではこれまで、旅行会社などが送ってくる観光客に対し、市町村の観光協会が対応する体制を取ってきました。ところが近年、団体客が減り、個人旅行が増え、観光客は個々にその地域ならではの味や文化、歴史を楽しむことを求めています。多様化する二ーズに対応するため、行政・民間、そして観光に関係のなかった人や組織も含めた地域全体で観光客を受け入れていく体制を構築する必要性が出てきました。

瀧本 今年3月に出された著書「地域プラットフォームによる観光まちづくり」では、特に「日本DMO(Destination Marketing /Management Organization)」を提唱されています。このDMOとは、どんなものですか。

大社 DMOとは、地域の観光マーケティング、マネジメントを担う機関です。日本では、観光振興の推進体制は行政準拠型。市町村や都道府県単位に観光協会・観光連盟があり、PR活動などをする構造ですが、そこにはマーケティングという概念が乏しいのが実態です。従来、受け入れ型の仕組みでできた体制ですので、地域を一つの集客装置と見立てた場合、どうやって集客するのかというマーケティングの機能が、圧倒的に欠落しているのです。

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