「未完成の場」が育む創造性

場所や道具は、さまざまな影響を人間に及ぼす。未完成の場には手を入れる余白があり、「自分たちで作り続けよう」というメッセージを発する。そのメッセージが、そこにいる人たちの行動を変えていく。

誰かから「どんな環境で育ちましたか?」という質問をされた時にはどう答えますか? 故郷の自然や街の景色のことを言う人もいれば、親兄弟のことを言う人もいるでしょう。人によって答えはさまざまだと思いますが、自然環境(山や川、草木や動植物、気候)、物的環境(街、建物、家具、道具)、人的環境(家族や友人)の中で、自分に大きな影響を与えたものを答えることでしょう。

場の環境が発するメッセージ

どんな環境に身を置くかを決めることは、3つの環境:自然環境・物的環境・人的環境の組み合わせの中で、自分にふさわしい影響を与えるものを選ぶ、もしくは自分でつくり出すということです。

中野セントラルパークで行われた「アイデアキャンプ」。アイデアキャンプとは、文具と街と自然の使い方に着目した新しい働き方/ 発想のスタイルの提案。例えば、いつもとは違う場所に出かけて、五感を刺激しながらアイデアを出してみる。現場に出かけて、心や身体で感じたことを下に考える。自分たちで環境をしつらえながら、ダイナミックな発想のプロセスを手に入れることを目指している

静かな緊張感の中で勉強をしたくて図書館に行く人もいれば、心地よいノイズを感じながらリラックスできる椅子に座って本を読むためにカフェに行く人もいるでしょう。「じっくり座って」、「静かにしよう」、「ちょっとひと息」。空間はメッセージをさまざまに発しています。

同じように道具もメッセージを発します。薄いグラスは「丁寧に扱ってね」。段ボールは「荒く扱っても大丈夫」。ポストイットは「とりあえずね、繰り返せるよ」と。人々の行動は、そうした小さなメッセージに影響を受けるものです。

アイデアを出しやすい環境をつくるためには、発想に必要な行動を促すメッセージを発するよう3つの環境を組み合わせます。ノリの良いブレインストーミングからは、色々な人からたくさんの笑い声が聞こえてきます。新しいアイデアを出すための環境は、そんな「楽しい」、「ワクワクする」、「気持ち良い」といったメッセージを発するべきです。

アイデアを出すための基本は「とりあえずの答えをたくさん頭の外に出す」ことですが、「試行錯誤しやすい」、「やり直しができる」道具があれば、その基本をより行いやすくなります。誰かのアイデアを否定せず、さらに発展させる「YES、 AND」の精神を発揮しやすいよう道具は全員に行き渡るようにしましょう。それは自然と「どんどん参加して」というメッセージをみんなに伝えることになります。

オフィスの外でアイデア出し

こうした環境の組み合わせとして私たちは、アイデアキャンプというスタイルを提案しました[1]。ポストイットや段ボール、いろいろなサイズの紙を持ってオフィスの外へ出かけ、みんなでアイデアを出し合おうというものです。

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