売れるものではなく、売りたいもので市場を創る。

2011年3月にタワーレコード株式会社代表取締役に就任。自他ともに認める、アイドルヲタク社長として、メディアに取り上げられることも多い。T-palette Recordsというアイドル専門レーベルを立ち上げるなど、新たな経営のチャレンジを次々と進める社長に、その構想を聞いた。

タワーレコード代表取締役社長 嶺脇育夫

T‐Palette Records(以下、Tパレ)は2011年6月にタワーレコードが立ち上げたアイドル専門レーベルだ。「通常レコード販売で30%程と取り分が決まっている小売の限界を超え、利益構造を変えていく」というビジネス戦略上の狙いはもちろんあるが、「売れるものの市場に乗っかるのではなく、売りたいもので市場を創る」というタワーレコード独自のマーケティングを体現するプロジェクトでもある。「世の中に知られているより、アイドルはずっと裾野が広いということを、ファンとしてわかっていた」「(当初の構想としては)あまり知られていなくて、良質な音楽で、全国流通に乗っていないという条件でアイドルを獲得し、タワーレコードから全国に紹介する」と嶺脇社長が語るように、Tパレに所属するアイドルたちは、あまたあるアイドルグループの中でもアイドル音楽の裾野の広さを現すような、特徴的な顔ぶれが揃う。

10万枚、5万枚のヒットを積み重ね、ミリオンの売上を作る。

売れるものではなく、売りたいもので市場をつくることを考え始めたきっかけは、嶺脇社長がタワーレコードの心斎橋店で働いていたころ、圧倒的人気だった女性シンガーのCDを大量に入荷したのに、全く売れなかった。「売れるものを置いても売れない場所なんだ」「他のお店が置いてるものを置いて売れないのなら、良いと思ったもの、他で買えないものをメインに積んで売ってやろうと考えたんです。すると売上が右肩上がりで伸びた」「ここに行けばおもしろいものがあると気づいたお客様は、必ずリピートしてくれる」ロングテールという言葉がまだない時代から、ロングテール型のマーケティングで高ロイヤリティのファンを生み出し、「ミリオンヒットでなくても、10万枚、5万枚の売上を10作、20作積み重ねたら同じ売上になる」という思想のもと、独自のマーケティングDNAを築き上げていった。

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