航空機部品から医療・食品へ 東大阪の町工場アオキの挑戦
(※本記事は経済産業省近畿経済産業局が運営する「公式Note」に2026年3月13日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

「モノづくりのまち」として知られる東大阪市に立地する株式会社アオキは、1961年、タイヤホイールの部品加工事業を営む個人経営からスタートしました。
需要の増大に伴い、工場移転を行いながら1979年には株式会社化。
1995年より株式会社アオキとして、現本社所在地で精密部品加工事業等を実施しています。
同社は、航空機産業の国内生産額が現在の半分にも満たない8,000億円程度であった1990年から航空機部品業界に参入し、ジェット旅客機「MD-11」の部品生産を開始しています。
航空機産業に古くから参入し、安心・安全な空の飛行を支え続け、確かな地位を築いてきた同社。
そんな同社で実施する取組等について、代表取締役社長の青木さん、同社の品質保証部門で働く西田さんにお話を伺いました。
CFRP材料加工への挑戦
現在、ボーイング、エアバスの製造する最新鋭の大型航空機においては、機体重量の約50%程度で炭素繊維強化プラスチック(CFRP)(※)材料が用いられています。
このCFRP材料は1980年代から航空機に少しずつ使われはじめ、航空機の骨格となる翼等の一次構造に用いられたのは、1994年に初飛行を行ったボーイング製の大型機777という機種です。
同社は、その777の試作機開発からCFRP材料加工に携わっています。
また、ボーイング製で最新鋭の大型機である787においてもCFRP材料加工に携わる等、CFRP加工に係る実績を積み上げています。
(※)CFRP (Carbon Fiber Reinforced Plastic)は、細くて強い炭素繊維の束をプラスチック樹脂でコーティングした複合材料。鉄の4分の1以下という軽さでありながら、何倍もの強度を持つのが特長。
このCFRPという新材料の加工に向けた挑戦は、取引先である新明和工業株式会社からの引き合いがきっかけでした。
当時、新たな材料であったCFRPの加工を行う企業が既存のサプライヤーにいない中で、同社がこの挑戦に名乗りを挙げました。
CFRPは炭素繊維とプラスチックという異なる性質を持つ素材が混在する複合材料です。
そのため、金属とは異なる非常に難しい加工が必要となります。
そんな難易度の高い加工技術の獲得には、当時引き合いのあった顧客と二人三脚で取り組んだといいます。
その努力の成果が実り、1997年には「世界一小さいボーイング社認定工場」として認定を受けるに至りました。
また、同社は、国内では10数社しかいない「Nadcap(国際航空宇宙産業特殊工程(※)認証プログラム)」も取得しています。
(※)特殊工程とは、容易にあるいは経済的に検査できない工程のことで、熱処理、表面処理、溶接、メッキ、複合材部品成形、ショットピーニング、コーティング、ハンダ付け、非破壊検査(X 線検査、超音波検査、磁気探傷検査、浸透探傷検査)等の製造工程と検査工程を含む工程。
中小企業ならではの人材“教育”
高い技術力を維持するために、社員教育に力を入れていることが自社の強みの一つだと語る青木さん。
人が“幸せであり続けること”は、“成長し続けること”だといいます。
そのため、社員が成長できる機会づくりに積極的に取り組んでいます。
同社では、外部で実施される講習への自由な参加、教養獲得を目的とした朝礼での本読み等、社員の成長につながる取組が実施されています。
「企業は教育の最後の砦。」
学校での教育を経て企業に就職し、社会人となっていく中では、企業としての“教育”も重要だと語ります。
そんな青木さんは、東大阪市の教員向け講習において、講師として登壇した経験もあるといいます。
「“教育”とは社員に良い刺激を与え続け、良い思い出を作ってあげること。」
会社として新しい挑戦を続けることも、社員に新たな経験をさせるための1つの取組。
新しいことに取り組むことが、社員の成長実感にもつながると語ります。
こうした社員の成長機会を作る一方で、一人ひとりを気にかけ、フォローしていくことも重要だという青木さん。
“顔の見える関係性”であることが、中小企業ならではの利点だといいます。
青木さんは社員との関係性を育むため、社員の誕生日に一人ずつプレゼントと手紙を送っています。
この取り組みは、青木さんが異業種交流会で出会った経営者の方のお話に感銘を受けて始めたものです。
実際に社員への手紙を書きはじめてみたところ、手紙に書く内容が思いつかない、すなわち普段から関わりを持てていない社員がいることに気が付いたといいます。
その気づきをきっかけに全社員と積極的にコミュニケーションをとるようになり、社内の雰囲気も良くなったと語ります。
中小企業ならではの利点を活かしながら、社員教育に取り組む同社。
会社は自己を実現するためのフィールドであって、社員には楽しく仕事をしてほしい。
何かにくすぶっているような人は、ぜひアオキの門をたたいてほしいと青木さんはいいます。
そんな同社で働く西田さんに、同社への入社を希望したきっかけを伺いました。
家族に誇れる仕事
「自分の子供ができたときに誇りに思えるような仕事がしたい。」
そんな思いを持って、同社への入社を希望したという西田さん。
航空機の仕事に携われるというのも、入社を決めた1つの理由だと語ります。
また、同社はオープンファクトリー「こーばへ行こう!」(※)に参加しています。
西田さんは、工場見学の案内を担当する中で、航空機産業に取り組む自社の魅力に気づくことができたといいます。
※工場を一般開放し、モノづくりへの興味・関心を深めてもらう東大阪市におけるイベント。
「他の産業より難しい仕事をやっているという自負がある」
日々の仕事が確実に自分の力になっている実感がある。仮に他の会社に行ったとしても、自分の能力が通用するだろうという自信があるといいます。
航空機は、仮に不具合が起こった場合にも、停止することなく乗客を安全に目的地まで届ける必要があります。
そんな高い安全性、冗長性を担保するためには、部品製造を行う中小企業に至るまで高い品質管理が求められます。
同社でも、製造過程におけるトレーサビリティ(追跡可能性)の確保や、製造部品の全数チェック等、他産業では実施しないレベルの作業を行っているといいます。
10数人ほどの少数精鋭で、航空機部品という難しい仕事に取り組んできた同社。
今後、企業として目指す姿を青木さんに伺いました。
目指すは「最強の中小企業」
同社の経営理念においては、「喜び溢れる最強の中小企業」を目指すことが掲げられています。
株式会社アオキ 経営理念
アオキは、力を合わせてモノづくりを牽引し、
地域に活きづき 全ての縁する人たちと
喜び溢れる最強の中小企業を目指します。
「最強の中小企業とは“つぶれない”会社。」
古くから航空機産業に携わり、業界において確かな地位を築いてきた同社。つぶれない会社であるためには、人が生活するうえで必要不可欠な「エッセンシャルワーク」に関わっていく必要があると語ります。
そのような考えのもと、同社では「医・食・住」分野への更なる事業展開にも力を入れています。
すでに、“医”療分野では、輸液バッグやボトルの搬送パレットの製造、“食”品分野としては、食品加工用の装置製造にも携わっています。
残る「住」についても、新規参入に向けての挑戦を続けているといいます。
会社の成長だけなく、社員の成長のためにも様々な分野へチャレンジを続ける同社。
今後の展望についても伺いました。
成長に向けて確かなステップアップを
青木さんは今後の同社の成長を段階的に考えているといいます。
この1~2年で成長性の高い航空宇宙・防衛産業において利益が出る体制を築き、その次には、他社が真似できないコア部品製造を行う付加価値の高い領域へ進出。
5~10年後には部品製造会社ではなく、メーカーとなって製品を売れるようになりたい。
海外との取引も視野に入れながら、売上を10億円へと伸ばしていきたいと語ります。
また、自社だけでなく、他の企業との連携も深めたいと語る青木さん。
各都道府県に信頼できる企業を置いた連携体を作り、営業・技術者同士の交流、情報収集の効率化等が行える仕組みも作っていきたいといいます。
長期的な視点を見据えて、社員と企業の成長を目指すアオキ。
青木さんは、日本が強みを持ってきた製造業で海外進出をしていきたいと語ります。
社員を大切にしながら、社会にとってなくてはならない“最強”の中小企業を目指して、アオキは更なる成長を目指します。
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- 近畿経済産業局 公式note