東大IPC 研究者向け商用化プログラムに5件を採択 魚骨からのリン酸回収など

東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC、東京都文京区)は、大学や研究機関の研究者向け技術シーズ商用化プログラム「Launch1000」において、5件の採択案件を決定した。2026年5月22日に発表した。文部科学省「次世代型オープンイノベーションのモデル形成事業」の一環として実施するもので、全国の大学・国立研究機関から120件の応募があり、技術の独自性、社会実装可能性、グローバル市場での成長可能性、商用化に向けた支援ニーズなどを総合的に審査した。

「Launch1000」は、創業前後の段階からグローバル市場での成長を志向し、早期かつ本格的な国際展開および将来的な海外市場でのExitを見据えたスタートアップの創出・育成を目的とするプログラム。大学・国立研究機関等に所属する研究者・学生が有する優れた技術シーズの商用化を加速するため、採択案件には最大1000万円のノンエクイティ資金に加え、東大IPCによる事業構想、知財確保、パートナー企業開拓などの実務伴走型支援を一体的に提供する。

採択された5件は、いずれも国内大学発のディープテック領域の研究シーズだ。東京大学大学院 情報理工学系研究科 博士後期課程の久保龍哉氏は、GPUの代わりにメモリで計算する高性能・省電力・低コストな計算機ハードウェアを開発し、AI半導体コストの削減を目指す。信州大学繊維学部准教授の照月大悟氏は、昆虫の羽ばたきで生じる気流と嗅覚情報処理に学ぶ動的ガスセンシング技術を開発し、インフラ点検や安全管理への貢献を狙う。

九州大学大学院工学研究院准教授の松本崇弘氏は、独自開発した「シンプルな金属イオン触媒系」を既存インフラに導入することで、グリーンメタノール・グリーン水素の低コスト製造プロセスの確立と事業化を目指す。近畿大学生物理工学部教授の森本康一氏は、経済安全保障上の特定重要物資に指定されているリン酸を畜産動物や魚の骨から温和な条件で回収する国産化技術を開発する。東京大学大学院情報理工学系研究科助教の矢野倉伊織氏は、現場で簡単に動作を教示・自動化できる次世代システムにより「Physical AI」の社会実装を進める。

「Launch1000」の先行支援案件としては、東京大学卓越教授の相田卓三氏による超分子プラスチックの商用化に向けた取り組みが進展している。既存プラスチックが抱える環境負荷やリサイクル性の課題に対し、新たな解決策となる可能性を有する材料技術で、海外投資家からの資金を含む累計約1.5億円のノンエクイティ資金を調達済み。大手グローバル企業とのPoC検討や、産業界で豊富な経験を有する研究開発人材の確保も実現している。

東大IPCは、大学関連スタートアップへの投資や国内最大級のアカデミア共催型創業成長支援プログラム「1stRound」などを通じて研究成果の商用化およびスタートアップ創出を支援してきた。「Launch1000」では、これらの知見を活かし、起業前・創業初期の段階から商用化の蓋然性を高め、グローバル市場で成長するディープテックスタートアップの創出を目指す。