もやしの食シーンに新たな付加価値を提供する 三吉商店の挑戦

(※本記事は「協働日本」に2024年6月21日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

有限会社三吉商店代表取締役の石橋隆太郎氏

協働日本で生まれた協働事例をご紹介する記事コラム。実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、有限会社三吉商店 代表取締役の石橋隆太郎氏にお越しいただきました。
三吉商店は、1953年創業のもやし製造会社です。

日本の食卓ではお馴染みの「もやし」ですが、人口減少に伴う消費量の低下や原料種子高騰、後継者不足など環境の変化を受け、この30年間でもやし製造会社は300社ほどが廃業に追い込まれています。

今では北陸三県で唯一の「もやし屋さん」となった三吉商店は、もやしだけではなく「もやしを食べるシーンに付加価値をつけたい」という想いで新規事業をスタート。

もやしを美味しく食べるためのドレッシングの製造・販売という、もやし製造会社の新たな挑戦となるプロジェクトに協働プロが伴走しました。

インタビューを通じて、協働プロジェクトに取り組みはじめたことで生まれた変化や得られた学び、これからの期待や想いについて語って頂きました。

(取材・文=郡司弘明・山根好子)

もやしを食べる石橋氏ら4人

もやしを食べるシーンに新しい価値を。事業の黒字化に向けて取り組みをスタート。

ーー本日はよろしくお願いいたします。はじめに、これまでの事業の歩みや協働を決めたきっかけを教えていただけますか?

石橋 隆太郎氏(以下、石橋):はい!よろしくお願いいたします。

三吉商店は、私の祖父が創業して70年を迎えた所謂「もやし屋さん」で、私で3代目になります。経営を引き継いでからは、日本の人口減少に伴う消費量の低下により、売上が低下していくリスクに直面。新しい事業に挑戦する必要性がありました。

もやし製造会社でよく行われているのは、もやしの製造販売の傍らカット野菜を販売する事業ですが、これはすでにレッドオーシャンとなっています。
そこで改めて一から「もやしの価値ってなんだろう?」と考えて、ついに至ったのは「もやしを食べる場面自体に付加価値をつけよう」というアイディアでした。

もやしの特徴である「味がないところに味がある」──どんな味にも変化し、食感を加えることができるという点に着目し、その味付けをするための調味料を作ることにしたんです。

そうして出来上がったのが、完全無添加にこだわった「nohea」という調味料ブランド。ドレッシングをはじめ、焼肉のたれやパスタソースなど色々な種類の調味料を作りました。出だしの売れ行きは好調で、大手の高級志向のスーパーにも置いてもらえて毎月の売上も800万円ほどあったのですが……もやし以外を売るのは初めてだったこともあり、流通の仕組みや売り方などの設計が上手くいかず、その内情としては赤字続きという結果でした。

さっそく営業体制を変えるなど試行錯誤してなんとかやりすごしてきましたが、70年続いた会社の事業が上手く行かなくなっている現実に、先代、先先代に申し訳ないという気持ちでいっぱいでした。協働日本を知ったのはちょうどその頃で、石川県主催の経営塾で同期だった四十萬谷本舗の四十万谷専務からの紹介がきっかけでした。普段から事業のことを話していたので、協働日本の伴走支援について教えていただき、興味を持ちました。

no-heat、no-addedが売りの「nohea」の無添加ドレッシング
no-heat、no-addedが売りの「nohea」の無添加ドレッシング

ーーそうだったのですね。そこからすぐに伴走を決めたのでしょうか?

石橋:実は、同時期に銀行によるコンサルティング支援の活用も考えていたこともあり、協働日本との取り組みがスタートするまでには実際には1年ほどかかりました。

当初、私は「赤字を黒字に変えたい」ことを念頭に置いており、その目的のため、まずは銀行による財務面のコンサルを受けて、徹底的な原価計算と、採算性を見てたくさんあった商品ラインナップの絞り込みを行いました。

少し財務状況が改善したこともあり、満を持して、事業を伸ばしていくためのオフェンシブな施策を協働日本にお願いすることにしました。

ターゲットとコンセプトを選定し、新たに獲得した販路は「同業者への販売」だった。

ーー実際に協働がスタートしてからはどのようなプロジェクトが進んでいるのでしょうか?

石橋:問屋の仕組みなども全くわからないところからのスタートだったので、まずはマーケティングや売り方を学ぶこと、自社の魅力・価値を知ることから取り掛かりました。協働チームは、協働日本CSOの藤村さん田村元彦さん、加藤彩乃さんの3名、三吉商店からは工場長、営業、そして私の3名が入っています。

一番に取り組んだのは自社の価値を知るための仮説を立てることです。その中で、「今、本当は何を一番売りたいのか?」という問いを立ててもらい、一度立ち止まって考えてみました。出てきた答えは「もやし屋のまかないダレ」でした。

「もやし屋のまかないダレ」
「もやし屋のまかないダレ」

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