高齢者の働き方を変える『銀の声』 2025年度グッドデザイン賞に

2025年10月15日、事業構想大学院大学のプロジェクト研究から生まれた、公益社団法人八王子市シルバー人材センターの『高齢者調査事業 銀の声』が、2025年度グッドデザイン賞を受賞したことが発表された。全国のシルバー人材センターとしては史上初の快挙となる。この事業は、事業構想大学院大学が八王子市と連携して運営する「八王子未来共創プロジェクト研究」での研究活動から事業化されたものであり、大学での構想が社会課題解決と新しいビジネスモデルを両立させた先進事例として高く評価された。

社会課題を解決する、新しい事業構想

『高齢者調査事業 銀の声』は、「働きたくても働ける場がない」という高齢者の課題と、「シニア市場向けの商品開発を行いたいが、高齢者ユーザーのリアルな声が聞けない」という企業の課題を同時に解決する、ユニークな調査事業だ。

肉体的な負担が少なく、これまでの人生経験や知見を活かせるインタビューやユーステストといった定性調査に特化することで、高齢者の新しい働き方を創出する。企業にとっては、これまで時間やコストの観点から収集が難しかった高齢者の一次情報をデータとして提供する。

グッドデザイン賞審査委員からの評価

グッドデザイン賞の審査委員は、この事業モデルについて「当事者から情報を深掘りして独自に引き出す手法エスノグラフィーの活用は、開発・デザインにおいて重要であり、近年増加している。高齢者独特の老いた身体や重ねた知見といった当事者にしかわからない情報は、一般企業など利用する開発者側の視点にとっては、対象者の一次情報を得るには時間やコストの負荷が課題となり、集めることが難しいため、情報の価値化は社会的な貢献度が高い。高齢者の労働環境の改善に向け開発された本取り組みが、高齢化で広がる市場の背景や社会環境とうまく合致している。働く高齢者が受け取る報酬条件が良い点でも、良くまとまった取り組みだ」と高く評価した。

大学での研究から、社会実装へ

本事業は、八王子市産業振興部が企画・運営する事業構想大学院大学のプロジェクト研究「八王子未来共創プロジェクト研究」から生まれたものだ。大学院での研究成果が、地域に根差したシルバー人材センターという実践の場と結びつくことで、具体的な事業として結実した。

今回の受賞は、高齢化という日本社会全体の課題に対し、事業構想大学院大学での「構想」が具体的な事業モデルとして社会に実装され、優れたデザインとして認められたことを示す好例となった。八王子市シルバー人材センターは、今回の受賞を契機に、今後も高齢者が安心して働ける環境づくりを推進し、地域社会への貢献をさらに深めていくとしている。