養鶏からシイタケ農家へ 集約畜産から持続可能な農家へ転換し収益改善した事例

多くの農家やその次世代たちが、選択肢があるなら集約型畜産を辞めたいと思っている。「トランスファーメーション・プロジェクト」は、その実現を支援している。(※本記事は『reason to be cheerful』に2024年9月17日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

葉野菜を育てている温室の中の画像
Copyright: Mercy For Animals

どのような定義であれ、リア・ガルセス氏にとってクレイグ・ワッツ氏は「敵」だった。米国に拠点を置く非営利の動物保護団体「Mercy For Animals」のCEO兼代表であるガルセス氏は、動物保護に人生を捧げてきた。2014年の春、ノースカロライナ州にあるワッツ氏の養鶏場で初めて会ったとき、ワッツ氏は彼女が心から軽蔑する集約畜産農家の1人だった。実際、ワッツ氏からの招待は奇襲ではないかと心配していた彼女は、夫に住所を伝え「私が戻らなかったら、鶏糞の中で朽ち果ててる私を探してね」と言ったほどだった。

ワッツ氏は、米国第4位の鶏肉会社であるパーデュー・ファームズ社で22年間にわたり、72万羽以上の鶏を飼育してきた。ノースカロライナ州でも最も貧しい郡の1つにある先祖伝来の土地に留まる方法を模索していたワッツ氏には、パーデュー社からの養鶏契約は魅力的な機会に思えたのだ。彼は銀行から20万ドルの融資を受け、巨大な鶏舎を4棟建設した。しかし、アンモニア臭が充満した空気の中で壁一面に押し込められた2万5000羽もの鶏は、すぐに病気になったり死んだりするようになり、パーデュー社の利益率に圧迫され、ワッツ氏は経済的な苦境に立たされた。

明かりのついた倉庫の中に2人の人物が並んでいる画像
出会った後、リア・ガルセス氏とクレイグ・ワッツ氏は、思いもよらず協力者となった。 Copyright: Mercy For Animals

ガルセス氏は驚いた。ワッツ氏が敵ではなく、味方であることに気付いたからだ。彼のような養鶏農家もまた同様に、養鶏を終わらせたいと思っていたのだ。ワッツ氏はこのような養鶏によって、自身の心身の健康に多大な負担を与えられたと説明した。しかし、高額な融資を受けていた彼には、抜け出す方法が見つからなかった。「私が反対しているシステムに捕えられていると気づいたのです」とガルセス氏は語る。この2014年の出会いは、双方の人生の軌道を変えるものとなった。

2人は共同で、ニューヨーク・タイムズに養鶏の人道的な懸念点を伝える映像を公開した。最初の24時間で、100万人の視聴者が自分の排泄物の中であえぐ鶏たちを見た。その2年後、内部告発者となったワッツ氏は養鶏業を完全に辞め、「社会的に責任ある農業プロジェクト」(Socially Responsible Agriculture Project)で有給の仕事に就き、債務返済を続けながら、ほかの養鶏農家に米国の養鶏業界の約束を信用するなと警告するようになった。

根っからの農家であるワッツ氏は、現在では「トランスファーメーション・プロジェクト(Transfarmation Project)」を代表する農家の1人となっている。同プロジェクトは、2019年にガルセス氏が「Mercy For Animals」の一環として設立したものだ。「彼の納屋に立って、ここをイチゴ農場にできないか、土地を別の用途に転用できないか、と考えたのを覚えています」とガルセス氏は語る。ワッツ氏はトランスファーメーション・プロジェクトから少額の助成金を得て、自分の大きな鶏舎に300平方フィートのコンテナを設置し、シイタケのような特殊なキノコの栽培を始めた。そして農業を放棄するのではなく、新しい事業を「できるだけ産業モデルから離れたものにしたい」とガルセス氏に語った。「農業は私の一部であり、血に流れているものなのです。天職です。何かが育つのを見るのが好きなんです」。

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