世界初のダイヤモンド半導体工場建設へ 大熊ダイヤモンドデバイスの挑戦
(※本記事は「産総研マガジン」に2025年3月26日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

北海道大学・産総研発スタートアップの大熊ダイヤモンドデバイス株式会社。福島第一原子力発電所の廃炉作業での使用に耐えるダイヤモンド半導体を商用化しようと2022年に創業した。創業から2年半で67億円超の資金を調達し、2025年に世界初のダイヤモンド半導体工場を福島県の大熊町に建設すると発表している。廃炉を皮切りに、衛星通信・通信基地局など、次世代産業のインフラとなり得るダイヤモンド半導体について、実用化・商用化を世界に先駆けてけん引している、大熊ダイヤモンドデバイス社代表取締役の星川尚久と同社の取締役も務める産総研上級主任研究員の梅沢仁の二人に話を聞いた。
日本だけにあるダイヤモンド半導体の特別な需要
ダイヤモンド半導体は、高周波・高出力を扱え、エネルギー効率が高く熱を発しにくいうえに放熱性が良いなど、他の半導体材料にはない優れた特性を持っている。しかも、放射線環境下や高温下での使用にも耐える。他の半導体材料は壊れてしまうような過酷な環境下でも半導体としての機能を失わないのが特長だ。(産総研マガジン「ダイヤモンド半導体とは?」)
今から11年前の2013年、産総研の主任研究員だった(現在は上級主任研究員)梅沢仁に、原子炉内での使用に耐える電子機器を開発していた北海道大学の金子純一准教授から相談が持ちかけられた。
「高温、高放射線量の原子炉内で使える電子回路をつくりたい。シリコンの半導体は数十分で壊れてしまうので使い物にならない。ダイヤモンド半導体を使うのはどうだろうか」
大学4年からダイヤモンド半導体の研究一筋だった梅沢の答えは、
「チャレンジングだとは思いますが、この環境で動くのはダイヤモンドくらいしかないでしょう。一緒にやりましょう!」
当時、ダイヤモンド半導体はこれまでの半導体材料とは桁違いの半導体特性をもつとわかっていたが、実用化には遠く及ばない未成熟な技術だった。梅沢は、相談を受けて実用化するにはどのような技術が必要か、それらを開発していく順序を検討した。こうして共同研究が始まった。

大熊ダイヤモンドデバイス社代表取締役の星川尚久がダイヤモンド半導体にたどり着いたのは、その3年後の2016年だった。北海道大学工学部出身で、福祉関係の事業を起こし、すでに成功していた星川だが、やはり、起業家として世界中で使われるようなテクノロジーを生みだす事業を創出したいと考え、事業の種となる研究成果を探すため、母校の研究室を回った。そして、金子研究室で「自分が貢献できるのはこれだ!」と直感した。
星川が事業の種に求めた条件は、
「テクノロジーの上流を抑えられる基礎的なものであること。開発に10年程度必要でも構わないが、それだけ他社にはハードルが高く競合しにくい技術であること。成功すれば世界を塗り替えられること。国がプロジェクト支援をする理由があること。明確で実用的な需要が一つ以上あること」だった。それらをすべてダイヤモンド半導体は満たしていた。

(記事の続きはこちらから。産総研マガジン「世界初のダイヤモンド半導体工場を建設」)

