洗練されたモジュラー住宅は米国の住宅不足問題の希望になるか
(※本記事は『reasons to be cheerful』に2024年5月24日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)
コロラドの工場が従来の住宅と見分けがつかないような住宅を製造し、住宅危機を打開しようとしている。
米コロラド州のブエナビスタには、ハウスメーカーの工場がある。ここで作られているのは、ダブルワイド(トレーラーハウスで現在一般的な2個組みのサイズのこと)やAフレーム構造のキット(テントのようなデザインのプレハブ住宅キット)ではなく、正真正銘、フルサイズの一戸建て住宅だ。この住宅メーカー「フェイディング・ウェスト(Fading West)」の工場は広大で、その床面は巨大なエアホッケー台のように、エアキャスターで製造した住宅ごと動かせるよう滑らかだ。そして現在、この施設は週に最大2軒の住宅を生産している。
住宅の専門家は何十年も前から、低価格住宅の不足に対する解決策としてモジュラー住宅の構想を練ってきた。1970年代には、連邦政府が米国中のモジュラー住宅工場に数百万ドルの補助金を投入した。しかし補助金をもってしても、住宅を効率的に製造・移動できるほどの技術がない、という事実は当時変えられなかった。さらにイメージにも問題があった。プレハブ住宅の類は「トレーラーパーク」と結び付けられることが多く、多くの中流階級のアメリカ人は、トレーラーパークを粗末で見た目も魅力がないものと考えていた。何十年もの間、「プレハブ」という言葉は少し悪い意味の言葉だった。
こうした速度と効率性から、一部の専門家はモジュラー住宅を低価格住宅の未来と見なしている。フェイディング・ウェスト社の計画が実現すれば、その未来はブエナビスタから始まるかもしれない。
全米で起きた住宅不足から、モジュラー住宅工場が生まれるまで
20年前、ブエナビスタ市の都市計画部長のジョエル・ベンソン氏が同市に移住したとき、住む場所を見つけるのに、何の問題もなかった。彼はコロラド州南部、ロッキー山脈のふもとのこの小さな村に、素晴らしい景色と他に類を見ないアウトドア趣味のしやすさを求めてやって来た。当時見つけた牧場の仕事では、住み込みで仕事が提供されていた。
「後にこの地域に家を買いましたが、その時は難しくもなく、費用もそうかかりませんでした」とベンソン氏は言う。しかしそんな時代は長く続かなかった。直近10年でブエナビスタは人気のリゾート地となり、さらに多くの人々が町に移住してきた。しかし村がある谷の両側にはすぐ山が迫っていて、居住用の土地は限られており、こんな辺鄙な場所での工事は非常に割高になる。かくして、住宅供給は需要に追いつかず、特に2008年の大不況が新規開発に打撃を与えた。2015年までに、ブエナビスタの住宅の空室率はわずか1%になったとベンソン氏は言う。
そして、パンデミックが発生し、状況はさらに悪化した。
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