新技術でALS患者も会話可能に 脳の神経信号を機械学習で音声にするBCI

(※本記事は『THE CONVERSATION』に2024年8月22日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

白い部屋にたくさんの機械が据え付けられた椅子に座る男性の後ろ姿。向こう側には大きなディスプレイがあり、黒い画面に緑色の丸と「the technology working well is a nice bonus」という白い文字が表示されている
筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患うケイシー・ハレル氏は、脳とコンピュータを接続するインターフェースを用いて、思考を言葉に変換する研究に協力している。Copyright:Nicholas Card

脳コンピュータ・インターフェース(以下BCI)は、麻痺した人々が失った機能、例えば手を動かす機能を取り戻すための画期的な技術である。このデバイスは脳からの信号を記録し、ユーザーが意図する行動を解読して、通常は筋肉を制御するために脳からの信号を伝える損傷した神経をバイパスする。

2006年以来、BCIのデモンストレーションは主に、コンピュータのカーソルロボットアームを操作することで、人々が腕や手の動きを取り戻すことに焦点を当ててきた。最近では、研究者たちは話すことができない人々のために、コミュニケーションを回復させるための音声用BCIの開発を始めている。

ユーザーが話そうと試みると、これらのインターフェースは話すための筋肉の動きに関連する個々の脳信号を記録し、それを言葉に変換する。その言葉はテキストとして画面に表示されるか、テキスト読み上げソフトウェアを使用して音声として出力される。

私は米カリフォルニア大学デービス校の神経補綴研究所(Neuroprosthetics Lab)に所属する研究者であり、BrainGate2臨床試験の一環として活動している。最近、私たちの研究チームは、ルー・ゲーリッグ病としても知られるALS(筋萎縮性側索硬化症)を患う男性の試みた発話を解読する音声用BCIを実証した。このインターフェースは、脳信号をテキストに変換し、その正確性は97%以上である。このシステムの重要な要素は、自然な脳信号を解釈するのを助けるAI言語モデルのセットである。

脳信号の記録

私たちの音声用BCIの最初のステップは、脳信号の記録である。脳信号にはいくつかの発生源があり、その中には記録のために手術が必要なものもある。手術で埋め込まれる記録デバイスは、ニューロンに近い位置に配置されるため、より強い信号を干渉なく取得できる。これらの神経記録デバイスには、脳の表面に配置される電極のグリッドや、脳組織に直接埋め込まれる電極が含まれる。

今回の研究では、参加者であるケイシー・ハレル氏の発話運動皮質、つまり発話に関連する筋肉を制御する脳の一部に、手術で配置された電極アレイを使用した。ハレル氏が話そうと試みる際の神経活動を、256本の電極から記録した。

底部にスパイクが並ぶ小さな正方形のデバイスと、上部に束ねられたワイヤー
脳組織に埋め込まれた64本の電極アレイが神経信号を記録する。Copyright:UC Davis Health

脳信号の解読

記録の次は、「複雑な脳信号を、ユーザーが言おうとしている言葉に関連付ける」段階だ。

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