CLOフォーラム2026開催、改正物流効率化法の全面施行前にCLOの役割と先進事例共有
2026年2月24日、国土交通省と経済産業省の共催による「物流統括管理者(CLO)フォーラム」が開催された。改正物流効率化法の4月全面施行を目前に控え、CLO選任の義務化に向けた政策動向や先進企業の取り組みを共有し、物流を経営の中核に位置づける意識転換を促すことが狙いである。当日は、木村大 国土交通省大臣官房審議官(物流・自動車局担当)、矢野裕児 流通経済大学情報学部教授、西成活裕 東京大学大学院工学系研究科教授による講演、花王・SUBARU・三菱食品の3社による先進事例紹介、登壇者全員によるパネルディスカッションが行われた。
冒頭、木村審議官が改正物流効率化法の概要とCLOの政策的位置づけを解説した。同法では、貨物重量9万トン超の特定荷主に対し中長期計画の策定・定期報告の提出・CLOの選任を義務化。荷待ち・荷役時間の短縮や積載効率の向上を判断基準として設定している。木村氏はCLOの役割について、物流を経営課題として戦略的に捉え、新たな価値の創出を牽引してもらいたいと述べた上で、1人のスーパーマンではなく、社内外のパートナーシップによって強い組織を主導してもらいたいとも述べた。
矢野教授は、改正物流効率化法で定められているCLOの役割を確認した上で、法改正の背景と目指す姿に照らして、CLOに真に求められる役割と資質について見解を示した。経営者視点での戦略構築・判断能力、グローバルサプライチェーンに関する知識・知見を含めた、ゼネラリストとしての能力が必要だとした。その点で、高度物流人材の育成に向けた産学連携の取り組みや、多様なキャリアパスの重要性を強調した。
西成教授は、AI時代の物流戦略について講演。AIの急速な進化により中長期計画が一瞬で陳腐化しうる不連続な時代において、CLOには未来を見通す力が最も求められると説いた。AIが物流現場を一変させる、あらゆる可能性の想定から逆算する「バックキャスト思考」を提唱。また、供給起点の大量生産・大量輸送に代わり、需要を起点にしたサプライチェーンの構築を目指す「デマンドウェブ」の概念を紹介した。
先進事例の紹介では、まず花王の森信介執行役員・ロジスティクス部門統括CLOが自社の取り組みや方針を説明した。花王はメーカー物流と販売(卸)物流をグループで一貫カバーする業界唯一の体制を持ち、荷主と運送の双方の視点から改善を推進している。具体的取り組みとして、スパウトパウチの折り込み幅を見直して輸送効率を150%に向上させたDFL(物流を考慮した設計)の事例や、豊橋工場でのバース予約システムと自動倉庫の連動による荷待ち時間削減、他業種との共同輸送、大手小売業との調整による受注・出荷リードタイム緩和などを紹介した。
SUBARUの村田眞一執行役員CLO・物流本部長は、社内の多様な部署での任務を経てCLOに就任した経験をもとに、ゼネラリストの視点からのロジスティクスの改革のありかたについて報告した。海外売上9割・北米比率8割のSUBARUにとって、日本からの完成車輸出と部品供給は生命線であり、物流効率化は経営直結の課題である。SUBARUではまず、各部門でバラバラに計上されていた物流費を全社総額で把握するダッシュボードを構築。さらに、工場でのドライバーによる荷役作業を廃止する「荷役分離」や、大手物流会社と連携した中京圏からの部品混載輸送、同業他社との完成車共同配送への着手など、業界を超えた連携事例を示した。
三菱食品の田村幸士SCM統括兼CLOは、4社合併で誕生した同社における物流統一の過程で、加工食品・酒類・菓子・低温とカテゴリーごとに商慣習が異なり、全国376拠点がセンター単位で個別最適化されているという状態のなか、全社共通の物流体制構築に取り組んできた。田村氏は、従来の「コスト削減」と「品質管理」のトレードオフだけでは経営環境の変化に対応できないとし、「コスト」「品質」「持続可能性」の3つの価値を同時実現するパラダイムシフトがCLOのミッションだと強調した。業態を超えた共同配送など、個社最適からの脱却を訴えた。
パネルディスカッションでは、CLOに求められる資質と人材育成が議論された。森氏はCLOの仕事について、物流部門内で完結せず、調達・生産・販売など各部門の制約条件のトレードオフを可視化し、経営の言葉で意思決定に関与することだと指摘。村田氏は、CLOの設置によって物流部門のメンバーのモチベーションが大きく向上したことに触れ、物流を経営課題として役員会の議題に乗せ続けることが重要だと述べた。田村氏は、物流がサプライチェーン上に分散して存在するため、経営課題として認知されにくかった構造的問題を、CLO設置が解消するとの見方を示した。
フォーラムの総括では、物流を「我慢を強いる部門」から、AIやロボティクスの実装が進む「最先端の実験場」へ転換し、高度人材が集まる産業として魅力向上を図る必要性を確認した。法令対応にとどまらずに物流を企業価値向上の源泉として捉え直し、戦略的に改革していくこと、さらに、ロジスティクスの課題解決を起点に、企業が個社最適から社会全体の最適化への追求へと踏み出す姿を、登壇者と参加者とで共有する場となった。