第一工業製薬 時代を先取りしたユニークな製品開発への挑戦
工業用薬剤でトップクラスの収益力を誇る第一工業製薬。創業から磨き上げてきた界面活性剤の技術をコアに、現在ではその用途を電子材料やバイオ分野にも応用する。新中期経営計画「SMART 2030」では、脱コモディティ化に向け、社会課題を先取りし、迅速に製品を開発する体制の実現をめざす。
山路 直貴(第一工業製薬 代表取締役社長)
生糸生産のための界面活性剤開発
時代に合わせて技術を多角展開
界面活性剤とは、水と油のように本来混じり合わない物質の境界面に働きかけ、相互作用を調整する物質を指す。第一工業製薬は、この界面活性剤の製造技術をあらゆる産業領域に応用してきた。
創業は1909年にさかのぼる。生糸が日本の輸出産業として隆盛をきわめていた明治末期に、繭の表面を滑らかにし、ほぐしやすくするための薬剤の製造販売を開始。1934年には日本初の合成洗剤「モノゲン」を一般消費者向けに発売した。その後は工業用界面活性剤を中心に事業の多角化を進め、近年では電子材料・半導体、電池、化粧品、食品など幅広い分野の中間材料を展開している。「一般の方には馴染みはないかもしれませんが、中間材料メーカーとして、産業や生活のあらゆる場面で役立てていただける製品をつくってきました」と山路直貴社長。
2025年3月期までの前中期経営計画では、「経営資源の再構築」「稼ぐ力の強化」「経営基盤の強化」の3つのテーマのもと、7つのプロジェクトを推進。特に「収益に貢献しない製品からの撤退」では不採算事業の整理でポートフォリオの見直しを進め、「ほぼ目標通り達成できた」と手応えを語る。また、「老朽化工場の貢献度向上」についても、築60年以上経つ工場のDX化により生産量の最大化とリードタイムの短縮に取り組んできた。「すでに償却を終えている工場なので生産性向上による利益貢献度は大きい」と今後の成果に期待を寄せる。
既存製品の一層の収益化を図る一方で、「ソリューション営業を核とする攻めのビジネスモデル構築」についてはまだ道半ばだという認識でいる。「お客さまの課題をしっかりと引き出し、それを解決する製品を提案することで、脱コモディティ化を図り、付加価値を高めていきたい」と山路氏。
営研一体型組織への再編
アイデアを迅速に事業化
今年度からスタートした2030年3月期までの新中期経営計画では、前中計の課題をふまえ、ソリューション営業を推進するために、組織体制を改めた。営業本部と研究本部を事業本部として一体化し、その下に3つの事業部を組み入れた。「営研一体型に組織を再編し、課題解決や新たな短期開発テーマに対して迅速に対応できる体制を整えました」とその狙いを説く。
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