データに基づく業務改革 AI活用につながる自治体DXの道
2025年4月の改正旅費法の施行を機に、多くの自治体が規程の見直しに動いている。自治体DXの流れの中で、データによる業務可視化が将来のAI活用につながる改革の鍵となる。
長谷大吾 コンカー 公共営業部 部長
公共セクターの業務のデジタル化が大きな転機を迎えている。コンカー公共営業部部長の長谷大吾氏は、SAP Concur Fusion Exchange 2026 Public Dayに登壇し、旅費業務を切り口にした自治体DXのあり方を語った。一般社団法人自治体DX推進協議会のレポートによれば、改正旅費法の施行を受け、自治体の約63.9%が旅費規程の見直しに着手した。法改正に合わせた改革は待ったなしの状況だ。
旅費法改正は業務改革の好機
より負荷の少ないしくみをつくる
長谷氏が強調するのは、規程改定にとどまらない抜本的な業務改革の必要性だ。2045年には行政サービス維持に必要な自治体職員数の充足率が80%に落ち込むと予測され、職員数減少と業務負荷の増大が深刻になっている。改正法に基づく実費での精算の導入により、領収書添付や宿泊費上限の目視チェックが増え、「職員の負荷が増えるリスクもあります」と警鐘を鳴らす。コンカーによる調査でも、旅費法改正が業務に影響を与えると感じる職員は87%、旅費申請手続きを煩雑と感じる職員は79%にのぼる。
そこで提案されているのが、キャッシュレスデータ連携を起点とした旅費システム導入による業務改革だ。交通系ICカード、QRコード決済、法人カード、旅行代理店サイトなどの利用データを自動連携し、データを根拠に申請から審査までを一気通貫で完結させる。規程違反は自動判定され、重篤な違反は「レッドカード」で申請不可、軽微な違反は理由付きで「イエローカード」として申請可能となる。14自治体での実証実験では平均45%以上の業務削減効果が確認され、最大で年間8億円を超える旅費の削減見込みが算出された事例もある。コンカーは「審査業務の自動化、旅費業務のデジタル化、SaaSによる法令変更の標準対応」の3本柱で自治体の改革を支える。
データで課題を可視化し
継続的な改善サイクルへ
このようなデジタル化による組織貢献の核は、データによる業務可視化にある。「これまで、『内部事務は工数が大変で、残業してこなしている』という声が多くありましたが、具体的な課題と打ち手は不明でした」と長谷氏は指摘する。コンカーは検討段階で目的共有・現状分析・将来像策定・GAP分析・効果試算の5ステップを通じた効果試算プロジェクトを実施し、定量効果を提示する。自治体における導入は、教育委員会から病院までをも含めて平均約9か月で全庁稼働を実現する。
ただし、重要なのはむしろ稼働後の対応だという。コンカーでは、専門のマネージャーが伴走し、利用者の成熟度をマップで確認しながら、現状と中期ゴールを明確化していく。具体例として挙げられたのが差戻率改善プロジェクト。差戻コメントを分析して頻出キーワードを抽出し、設定変更や運用ルール周知などの打ち手を短期・中期・長期に整理して約6か月で実施・モニタリングする。
「見える業務は改善できる・改革できる。データ・業務の可視化は運用高度化のための第一歩です」と長谷氏。同社では、AIによる不正検知、データの民主化を目指す未来像を描く。「まずは今のデータをいかに把握できるか。今後のAI活用において、これが大きなポイントになります」と締めくくった。
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