日本電産vs村田製作所 円安・EV需要を追い風に描く成長戦略

記録的な円安は電子部品各社には追い風で、旺盛なEV需要などが業績を押し上げている。モーターなど数々の世界トップシェア製品を持つ日本電産と、コンデンサーなどで世界的シェアを誇る村田製作所は、いずれも過去最高の業績となった。今後、どのような成長戦略を描くのか。

円安を追い風に好調な電子部品大手2社

このところの記録的な円安が追い風になる業界もある。たとえば、海外売り上げ比率の高い電子部品メーカー各社だ。中国をはじめとする旺盛なEV需要などが、業績を押し上げている。

精密小型モーター、車載用モーター等を主力事業とする日本電産の場合、2022年3月期の連結売上高は、前年同期比18.5%増の1兆9182億円で、営業利益は7.2%増の1715億円となった。いずれも過去最高だ。

日本電産は1973年に設立され、ブラシレスモーターでは世界の4割以上のシェアを持つ他、HDD用、ゲーム機用、プロジェクター用、インバーターエアコン用など、家電から商業・産業用に至る多様なモーター製品群が世界トップシェアを誇る。連結売上高を地域別で見ると、2020年度では中国、アメリカが全体の5割弱で、日本、タイと続く。

新中期戦略目標「Vision2025」では、精密小型モーター事業は、インドと中国を重点地域として、電動バイクや小型EV向けの生産ライン拡充を計画する。一方、現在、中国での市場占有率が27%でトップを走るEV用駆動モーターシステム「E-Axle」については、多国籍自動車メーカー・ステランティスと設立した合弁会社のもと、2022年度後半から量産を本格化する。2030年にはEV新車販売台数が2020年の数十倍に増えるといわれる中、世界ナンバーワンの車載ハードウェア企業を目指す計画だ。

一方、ファンクショナルセラミックスに基づく電子デバイスを手がける村田製作所では、2022年3月期の連結売上高が前期比11.2%増の1兆8125億円、営業利益は前期比35.4%増の4241億円となり、こちらも過去最高を記録している。コンデンサーやリチウムイオン二次電池などが好調だった。特に積層セラミックコンデンサーは、リモートワークやオンライン教育などの定着を背景にPC向けが増加し、カーエレクトロニクス向けも増加したという。

村田製作所は1950年の設立で、積層セラミックコンデンサーの世界シェアが40%、表面波フィルターが50%、EMI除去フィルターが35%など、世界トップシェアの製品は数多い。地域別売上高で最も大きな割合を占めるのは中華圏で、その他アジア地域がこれに続く。「中期方針2024」では、コンポーネントなどの標準品ビジネス、デバイス、モジュールなどの用途特化型ビジネスに加えて、これらを基にした高付加価値型ソリューションを提供するという3層の事業ポートフォリオ構築を目指し、通信、モビリティという基盤領域の他、環境やウェルネスという新しい領域でのイノベーションをも視野に入れる。2022年3月のレゾナント社買収も、通信分野での競争優位性を確立する狙いからだ。

日本を代表する電子部品メーカーの好調は、世界的な電動化の波を加速するのみならず、脱炭素社会の実現にも資する。いずれも京都に生まれた世界的企業、日本電産と村田製作所のさらなる成長に期待したい。

両社の概要

日本電産

設立 1973年
所在地 京都府京都市
代表 関 潤(代表取締役社長執行役員) 
資本金 877億8, 400万円(2022年3月)
従業員数 連結:114, 371名(2022年3月)
主な
事業内容
精密小型モーター、車載モーター、家電・商業用・産業用モー ターなどの開発・製造・販売
●精密小型モーター(HDD用、触覚デバイス、駆動用 等)
●車載用(電動ウォーターポンプ、電動パワステ用 等)
●家電・商業・産業用(エアコン・冷蔵庫用、ブレードピッチ制御用等)
●機器装置(ロボット用精密減速機 等)
●電子・光学部品(デジカメ用シャッター 等)
拠点数 ●国内:34
●海外:アジア199、ヨーロッパ83、中東・アフリカ3
北米32、中南米27 (2022年3月)

出典:ホームページ(企業概要、事業概要)、会社案内

 

村田製作所

設立 1950年(創業1944年)
所在地 京都府長岡京市
代表 中島 規巨(代表取締役社長)
資本金 694億4, 400万円(2022年3月)
従業員数 連結:77, 581名(2022年3月)
主な
事業内容
ファンクショナルセラミックスをベースとした電子デバイスの研 究開発・生産・販売
●積層セラミックコンデンサー●表面波フィルタ●セラミック発振子
●圧電センサー●セラミックフィルター●圧電ブザー
●近距離無線通信モジュール●多層デバイス●コネクター
●アイソレーター●電源●回路モジュール●EMI除去フィルター
●インダクター●センサー●抵抗器●リチウムイオン二次電池

出典:ホームページ(企業情報)

 

実績

日本電産

(IFRS) 出典:ホームページ(連結業績ハイライト)

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