FRDジャパン 海に依存しない陸上養殖で世界初の商業化へ

高度ろ過技術を駆使し、海に依存しない完全循環型の陸上養殖事業に取り組むFRDジャパン。「おかそだち」のサーモンを安定的に生産し、世界的な需要に応えることを目指している。代表取締役Co-CEOの十河哲朗氏に、事業の構想や収益化実現のポイントなどを聞いた。

十河 哲朗(株式会社 FRDジャパン 代表取締役Co-CEO)

海のない場所でサーモンを育てる
陸上養殖システムを開発

海のない埼玉県で孵化させ、千葉県で成魚に育てたサーモントラウト。その名も「おかそだちサーモン」がスーパーやコンビニなどを通じて消費者の舌を楽しませている。手掛けるのは、埼玉県に本社を構える2013年創業のFRDジャパンだ。同社がサーモン養殖に乗り出したのは、代表取締役Co-CEO十河哲朗氏の商社時代の経験がきっかけだった。

三井物産で水産物の輸入販売を担当していた十河氏は、ノルウェーやチリに赴きサーモンを買い付ける中で、養殖産業の現状を目の当たりにした。

「夏場の海水温が高く、台風や豪雨のリスクもある日本ではサーモンの海上養殖が難しいため、国内に流通するサーモンの8割をノルウェーやチリからの輸入に頼っています。一方で、サーモンはエビと並ぶ二大水産物であり、世界需要は400万トンあると言われています。世界的な人口増加や健康志向の高まりなどを背景に、今後サーモンの需要は一層増していくと予想されますが、現地の海面はすでに養殖できる余地が残されていません。その上、エサの残骸やフンによる海底汚染が社会問題になっており、現地政府も養殖ライセンスの新規発給を規制している状態です。このままでは需給バランスが崩れ、手頃な価格だったサーモンを十分に手に入れることができない時代がくるかもしれないという危機感を覚えたのです」

これらの問題を解決すためにFRDジャパンが取り組んだのが、海に依存しない新しい陸上養殖だった。陸上養殖では貯水槽などの陸上施設を利用して魚介類の養殖を行うため、気候的にも地理的にも制限を受けない。他にも陸上養殖を行う企業は存在するが、従来の循環式陸上養殖システムでは、水槽に貯まる硝酸などの物質を取り除くため、最低でも1日30%の海水を替えなければならない。しかも、取り入れた海水はサーモンの適温である15℃まで冷却する必要があり、電気代がかさむ点もネックとなっていた。

そこで、FRDジャパンは水処理技術を応用し、硝酸をバクテリアの力で除去する革新的なろ過装置を開発。これにより水替えは原則不要(厳密には一日当たり1%程度の水を交換する)で、水を循環させながら養殖を行う閉鎖循環式陸上養殖を実現した。水道水や井戸水さえあれば場所を選ばずに養殖できる上、循環している飼育水を15℃に保つだけでよく、電気代を大幅に節減できるという。

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