ココナラ スキルシェアで実現する「一人ひとりが自分のストーリーを生きる」世界
2012年の創業以来、「知識・スキル・経験」の価値化という新たな市場を切り拓いてきた株式会社ココナラ。会員登録数500万人超、740種類以上のカテゴリにわたるスキルマーケットプレイスから、現在は10事業体制の「ココナラ経済圏」へと急速な拡大を遂げている。創業者から経営を引き継いだ鈴木歩社長は、1兆円規模の取扱高実現に向けて、どのような事業構想を描いているのか。その戦略と組織づくりの真髄に迫った。

創業者3人から引き継いだビジョンと滑らかな経営承継
株式会社ココナラの経営体制は、創業企業としては珍しい形態であった。ビジョンの発信、ゼロイチでプロダクトを生み出すことなど、それぞれ魅力に長けた計3人の創業者体制であった。鈴木氏がリクルートから転職し、同社に参画したのは2016年。当時の社員数はわずか15名だった。
「創業者3人ともそれぞれの領域では突出した強みを持っていましたが、さらなる成長を目指し組織として成長していく仕組みを作れる人材を求めていたんです」と鈴木氏は振り返る。入社時から事業運営を任され、2020年9月の社長就任は「実態に合わせた自然な流れ」だったという。
同社のビジョンは創業時から一貫している。「一人ひとりが『自分のストーリー』を生きていく世の中をつくる」。この理念の下、目に見えない人のスキル・知識・経験を自由に売買できるプラットフォームの構築を目指してきた。創業当初は500円均一のワンコインマーケットとして始まり、似顔絵作成や相談などのプライベート利用が中心だった。しかし鈴木氏は、このギャップにこそ可能性を見出したという。「理想と現実のギャップが大きいほど、自分の介在価値を発揮できる。そのワクワク感が入社の決め手でした」。
10事業体制への急拡大と「ココナラ経済圏」構想
鈴木氏が主導する現在の事業戦略は、単一のスキルマーケットから「すべてがそろうサービスプラットフォーム」への転換である。2023年からの2年間で、事業数は一気に10まで拡大した。マーケットプレイスのマッチング形式も、従来のEC型に加えて、求人募集型、スカウト型、コンテンツマーケット型など4つの新形式を追加している。
さらに大きな変化は、エージェント型という新たなビジネスモデルの導入である。エンジニア紹介の「ココナラテック」、BPO領域の「ココナラアシスト」、コンサルタント紹介の「ココナラコンサル」など、継続型プロジェクトへの人材アサインを可能にした。「社会的インフラになるためには、取扱高1兆円規模が必要。現在の200億円から50倍成長しなければならない」と鈴木氏は力を込める。
この急速な多角化を支えるのが、500万人の会員基盤と115万人超の人材データベースという同社の核心的資産である。各事業はこれらのアセットを共有し、シナジーを生み出しながら成長を目指す。生成AIの台頭という環境変化に対しても、「変化を恐れずに楽しむ」というバリューの下、AIを活用した新たな価値提供や、AI影響を受けにくい継続型サービスへのシフトなど、柔軟に戦略を転換している。
ビジョン共感を軸とした採用戦略と「バリュー評価制度」
組織拡大を支える人材戦略において、鈴木氏は独自のアプローチを取っている。「10事業に拡大したことで、事業責任者のポジションが必要になった。描きたい未来は明確でワクワクするが、具体的なプロセスは人がいないと始まらない。『じゃあ俺が一肌脱いでやろう』というハイクラス人材が集まってきている」。
同社の評価制度も特徴的である。業績評価が50%、残り50%は3つのバリュー(One Team, for Mission / Beyond Borders / Fairness Mind)の体現度で評価する「バリュー評価制度」を導入している。特に「Beyond Borders」に含まれる「変化を楽しむ」という価値観は、この1、2年で特に強調されているという。
求める人材像について鈴木氏は、「変化を楽しみ、常に自分自身をアップデートできる人。そして、既存マーケットのシェア争いではなく、新しいマーケットを自ら定義し創造していけるオーナーシップを持つ人」と語る。新規事業の提案も、半期ごとのビジネスコンテストではなく、毎週の経営会議や各事業の執行会議で随時受け付ける柔軟な体制を取っている。
今後の成長戦略では、M&Aやアライアンスも積極的に活用していく方針だ。すでにポートエンジニアリング、アン・コンサルティングの買収を実施し、みずほ銀行とのパートナーシップも締結している。「オーガニック、インオーガニック、アライアンス、あらゆる手段を使って、ココナラ経済圏の実現に全力で取り組む」と鈴木氏は決意を示す。18兆円規模といわれるスキルシェア市場において、現在のデジタル化率はわずか0.6%。この巨大な未開拓市場に、ココナラは独自のビジョンと戦略で挑戦を続けている。

- 鈴木 歩(すずき・あゆむ)氏
- 株式会社ココナラ 代表取締役社長CEO
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