OSG 世界トップシェア製品を誇るグローバル・ニッチ企業の矜持
世界のものづくりを支えるBtoB企業 OSGの大沢社長に、経営哲学についてお話を伺った。タップをはじめとする切削工具のリーディングカンパニーとして、事業の多角化やサステナビリティ経営にも注力。欧州における長年の経験から得た「言える化」「聴ける化」「視える化」の組織論とは。
オーエスジー代表取締役社長の大沢伸朗氏(右)と
事業構想大学院大学のスティーブ・モリヤマ教授
── 本日はお忙しいなか、貴重なお時間いただきお礼申し上げます。前回のクラレ取締役常務執行役員の渡邊知行氏に続き、ベルギー時代からのお仲間であるオーエスジー株式会社(東証プライム6136、以下OSG)の大沢社長にお話を伺います。
「工具」というと、一般の方々はホームセンターの商品を思い浮かべるでしょう。しかし、OSGの扱う製品は、そういった消費者向け工具ではなく、工作機械の先端に付ける切削工具、すなわち金属に穴を開けたり、ねじを立てたり、型取りをするための工業用研削工具です。このため、一般の方にはよく知られていませんが、「OSGの製品なくして人々の生活は成り立たない」と言っても過言ではないほど、自動車、航空宇宙、電子部品、半導体、医療、建機など、ありとあらゆる分野の工業製品を支えている企業です。
恐れ入ります。たしかにB to B企業のため、一般消費者には見えにくい存在ですよね。ですが、仰るように、皆さんが日々の暮らしで使われている製品の大多数において、弊社の製品が製造初期工程で使われているのです。また、弊社の海外売上比率は7割近くに達しており、日本だけでなく、世界中のものづくりを支えているという矜持をもっております。実際、創業製品であるタップ(ねじ切り加工工具)は、日本市場で約55%、世界全体で約3分の1のシェアを占め、グローバル・ニッチ企業としてタップ製造業界の首位を走っております。
── つまり、世界のものづくり産業を支える縁の下の力持ち、それが御社の素顔なのですね。
さて、先ず簡単に大沢さんの経営者に至る道のりについて教えていただきたいと思います。愛知県のご出身で、早稲田大学理工学部(材料工学)を卒業され、そのまま御社に入られたのでしたよね。
はい、当時バブル期で、スティーブさんもよくご存じのとおり、就活を頑張らなくても錚々たる会社から内定をもらえるような空気感が漂っていました。特に、理工学部の場合、枠みたいなものもあり、私は愛知県の人間ですから、トヨタ系に入って何年かしたら弊社に入ろうかなと、漠然と考えておりました。ですが、父は「OSGに役立つ人間にいち早くなるには回り道は不要。先ずは英語を身につけよ」と強く勧めてきました。結局、説得されてOSGに入りました。
── 一般論ではありますが、創業家の方たちは、「いずれ一族の会社に入るのであれば、まずは外の世界を見てこい」と言って、新卒時点では子息を銀行や商社などに入れるケースが少なくないように見受けられます。そんななか、お父上は、ものづくり会社のリーダーに大沢さんをいち早く育てるために、真剣に最適解を探し求めたのでしょうね。つまり、その構想の結論が新卒入社だったのでしょう。
そうかもしれません。それで入社直後からアメリカに渡り、英語を学んでから、1年後には当時協業していたドイツの会社に研修生的な形でお世話になりました。その会社に1年半ほどおりまして、ドイツ語も少しできるようになったのですが、今はすっかり忘れてしまいました(笑)。
── ちょうど私がロンドンで働いていた頃、ドイツにいらしたのですね。やはり大沢さんとはご縁を感じます。
ですよね。それで1994年に日本に戻りました。弊社の主力製品でタップという、ねじ切り加工工具を作る旗艦工場が新城市八名にございまして、そこで生産性を上げるための改善策を考案・推進するチームの末席に加えてもらい、3年ほどでしたが、工場全体を俯瞰する力を養うことができました。そして、1997年に欧州責任者の補佐として英国に赴任。ちょうど、弊社が英国の代理店を買収し、そこを拠点に欧州展開を開始し始めた頃でした。
全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。
-
記事本文残り69%
月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!
初月無料トライアル!
- 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
- バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
- フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待
※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。