秩父やまなみチーズ工房 酪農・乳業メーカーと連携し、食文化に貢献
秩父やまなみチーズ工房は、創業からわずか2年で国内のチーズコンテストで最優秀賞を受賞した実績を持つ、気鋭のナチュラルチーズ生産者だ。秩父の人と自然が生み出す恵みを生かし、地元の酪農家や乳業メーカーとも連携しながら秩父の食文化を盛り立てていこうとしている。
業界紙編集長からの転身
53歳で新たな職業、新たな地へ
西武秩父駅から北西に車を走らせること20分余り。県道283号線の道沿いに白塗りに青い牛のイラストが描かれた秩父やまなみチーズ工房の平屋の建物が現れる。秩父にある唯一のチーズ製造所で、代表の高沢徹氏がチーズづくりを、妻のりり子さんが包装や発送を担当し、パートを入れても4人という小さな工房だ。併設店舗で週末のみ販売を行っており、売上の6割は飲食店や小売店などに卸している。
高沢氏が工房を立ち上げた経歴は異色だ。繊研新聞の記者として活躍し、取締役編集局長も経験したが、在職中に体調を崩し休職を余儀なくされる。復帰を考えたものの断念し、2016年に53歳で退職。これを機に「いつかは妻の生まれ育った秩父で暮らすのもいいな」と頭の片隅にあった思いを実現すべく、かねてより趣味で行っていたチーズづくりを仕事にしようと、北海道の共働学舎新得農場でチーズづくりを約10カ月間学んだ。
その後、夫婦2人で秩父に転居して工房を開く。開業資金は手持ちの資金に加え、金融機関からの融資、国内チーズ生産者を保護するための農水省の補助金などを活用した。「力になっていただいたのが秩父商工会議所です。開業の相談にいったところ、資金計画や融資先の紹介、事業計画書の作成方法など、的確にアドバイスしてくださり、本当に助かりました」と振り返る。
2018年10月に秩父で唯一のチーズ工房は生まれた。順調に開業へとこぎつけたが、その後には苦労もあった。濃厚な乳製品を扱うため排水設備に想定以上の負荷がかかり、600万円をかけて排水設備を増強し直すことになり、1カ月ほど休業せざるを得なかったこともあった。
「ほかにも発酵がうまく進まないといった技術面での苦労もありましたが、修行先や他のチーズ工房の方に教わりながら解決しています。今も常に勉強ですね」
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