事業予算は5億円、西日本最大規模のアートNPOの経営戦略
大分県別府はブランド総合研究所の地域ブランド魅力度ランキングで、2008年の34位から、2020年は熱海や伊豆に次いで17位に躍進した。それに寄与した一つがアート系NPO法人BEPPU PROJECTの活動だ。4月に交代した新旧2人の代表理事に話を聞いた。
文・矢島進二 日本デザイン振興会 常務理事
年間事業予算5億円のNPO
別府市の人口は約12万人で世界有数の温泉地であり、第3次産業従事者が80%を超えるなど九州の中でも独自の街だ。BEPPU PROJECTは、アーティストの山出淳也氏が2005年に立ち上げたNPOで、2021年度の年間予算は5億円を超えるなど、アート関連のNPOとして西日本で最大規模に成長。活動実態はNPOというよりプロジェクトマネジメント集団と呼んだ方が理解しやすい。
発足当時の別府も観光地として栄えていたが、旅行客の高齢率が上昇し、将来を見据えると若い世代を取り込むべきと山出氏は考えた。若年層・女性・個人に焦点を当て、アートをキーとし、彼女たちにインフルエンサーになってもらい、間口を広げることを構想。「温泉しかない入口にアートという別の扉を作るべきだと。“感性価値”をつくり多くの人にシェアしてもらい、顧客自身が価値を高めていくモデルを考えました」と山出氏は振り返る。
17年間の活動は多岐に渡り2,000以上のプロジェクトを実施してきたが、以下6つに大別できる。①文化芸術振興事業、②移住・定住促進事業、③福祉・障害者芸術事業、④観光振興・情報発信事業、⑤産品のブランディング・6次化事業、⑥クリエイティブ×企業による産業振興事業。
①は現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」、市民文化祭「ベップ・アート・マンス」や「国東半島芸術祭」「in BEPPU」などの芸術祭のプロデュースから、展覧会や講座の企画・運営などを通したアーティストの活躍機会の拡大。また小学校でのアーティストによる特別授業は既に延べ70校で実施した。②は別府への移住を希望するアーティストに特化した施設運営で、既に120名を超え、市の基本計画に含まれることになった。③は障害者や高齢者施設にアーティストを派遣し、表現活動や商品開発の支援。④は中高年男性団体客が中心であった観光客を、アートを観光資源化し、若年層・女性個人客に変化させるための各種の情報発信。⑤は主原料が大分県産のもの集めたブランド「Oita Made」のプロデュース。⑥は地元企業とクリエイターをマッチングさせる「クリエイティブ・プラットフォーム」を展開し、数々の成功例を生み出す。商品開発だけに留まらず、事業全体の構想設計まで関与しており、本連載第44回の「ガレリア御堂原」はその一つだ。
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