株式会社レッドクリフ、ドローンショーで世界へ  日本発の空の感動体験創出

創業わずか5年で国内ドローンショー市場のトップシェアを獲得した株式会社レッドクリフ。6000機以上のドローンを保有し、花火大会や大阪・関西万博など大型イベントで存在感を示す。佐々木孔明社長は「日本のIPコンテンツと技術力を掛け合わせ、世界中に驚きと感動を届けたいと思っています」と語る。同社の急成長の軌跡と今後の戦略を聞いた。

海外での衝撃体験から日本初の本格ドローンショー企業へ

2019年に創業した株式会社レッドクリフは、当初ドローンの空撮事業からスタートした。転機となったのは、佐々木孔明社長が海外でドローンショーを目にした時である。 「当時、日本にはドローンショーを行うチームがなかったんです。海外チームが来日して実施していたショーを見て、すごく感動しました。壮大で様々な可能性を感じるショーでした」と佐々木氏は振り返る。

DJI日本1号店のオープニングスタッフとして2年間勤務していた佐々木氏。撮影機器としてドローンの幅広い活用を学んでいたが、ドローンショーは全く異なる世界だった。「撮影や監視のツールとして“見るため”の存在だったドローンが、“見られる”存在として、人々に感動を届ける。1台のパソコンで何百台ものドローンを制御しているところにも、非常に驚きを感じました。しかし、コストが大きいので日本では流行らないのではないかという懸念もありました」 その後、ドバイを訪れた際に転機が訪れる。毎日のように行われるドローンショーに人々が集まり、企業ロゴが空に描かれ、SNSで拡散される様子を目撃。「これは空の広告媒体だと思いました。プロモーションに数千万円を投じる企業は数多く存在するんじゃないか」と確信した佐々木氏。

株式会社レッドクリフ提供

日本に戻ると、すぐに事業計画書の作成に着手し、投資家へのプレゼンテーションを重ねた。試行錯誤を経て資金調達に成功し、2021年から本格的にドローンショー事業に参入した。

圧倒的規模と高品質で差別化 3つの強みで市場を席巻

現在、同社は6000機以上のドローンを保有し、国内シェアNo.1の地位を確立している。特に1000機以上の大型ドローンショーでは、国内案件の95%以上を同社が手がける。

「我々の強みは大きく3つあります」と佐々木氏は説明する。

第一に圧倒的な規模だ。「当社の機体保有数は、恐らく他社の数倍ほど。ショーに使用するドローンの数が増えるほど、空に描ける映像の解像度も上がります。クオリティの高いドローンショーを実現するには、やっぱりある程度の機体数が必要なんです」

第二の強みは、高品質なアニメーターチームである。10名以上の3DCGアニメーターを擁し、その半数以上が実務経験10年以上のプロフェッショナルだ。「CM制作や建築、商品開発の分野で活躍してきたアニメーターの方々に積極的に参加いただいています。同じ1000機のドローンを使ったショーでも、アニメーターのクオリティが高ければ、その表現はより精緻で印象的なデザインになります」

第三の強みはコンテンツ力だ。国内トップの演出家と連携し、ストーリー性のあるショーを創出している。「日本のアニメやゲームコンテンツは、世界中で高い評価と人気を得ています。こうしたコンテンツと私たちが連携することで、日本の観光資源として新たな魅力を発信していきたいと考えています」

花火大会との連携も同社の特徴である。全国の花火大会でドローンショーを実施し、協賛企業のロゴを空に描くことで新たな価値を創出している。「ドローンで企業ロゴを夜空に描き出すことで、花火大会における協賛の広告価値が向上し、新たなスポンサー企業の参画が増えています。また、既存の協賛企業からの協賛金額が上がるケースも見受けられます。来場者数の増加にもつながっており、ドローンショーは花火大会自体を持続可能なイベントとして支える役割も果たしていると考えています」と佐々木氏は手応えを語る。

教育から世界展開まで 多角的成長戦略で未来を描く

同社は事業の多角化を進めている。まず注力するのが教育分野だ。プログラミング用ドローンを導入し、小学生から大人までを対象とした体験型授業を提供している。「ドローンショーはプログラミングによって飛んでいるんです。各世代の方に楽しみながらその仕組みを学んでいただき、最後に実際のドローンショーをご覧いただくことで『こんなにすごい世界があるんだ』と感じていただけたら。将来的にこの分野に関心を持ち、目指したいなと思うきっかけとなれば嬉しいですね」と佐々木氏は期待を込める。

新たな市場として、インドアドローンショーも開拓中だ。 「Bリーグのハーフタイムショーやコンサート、ライブなど、屋内イベントでの需要は非常に大きいと考えています。私たちが手掛けるからには大規模で高品質なインドアドローンショーに力を入れていきたいなと」 さらに同社独自の技術として、花火搭載ドローンを開発。秋田県大曲の花火師と共同開発したこの技術は、大阪・関西万博の開幕初日にも披露された。

佐々木孔明社長

「現時点において、国内でこの花火搭載ドローンを使ったショーの実施に成功しているのは、弊社レッドクリフのみです」と佐々木氏は自信を見せる。 全国展開も着実に進む。パートナー企業制度を導入し、北海道、群馬、静岡、埼玉といった各地の企業へ機体を販売。「将来的には、47都道府県それぞれにドローン関連企業が存在するネットワークを築きたいと考えています」

最終的な目標は世界展開である。「私たちは日本発の企業として、日本のコンテンツとともに世界市場に挑戦したい。世界中で『ドローンショーといえばレッドクリフ』と認識されるような存在を目指しています」と佐々木氏は力強く語った。