U・Iターン者と、「上野村型ダイバーシティ」で新たな村づくり

群馬県で最小人口の自治体である上野村。同地で観光事業を担う上野振興公社は、多様性のある移住者を従業員として受け入れる独自のダイバーシティを推進し、サステナブルな観光で移住促進も図っている。自身もIターン者である瀧澤取締役に、同社の取り組みや展望について話を聞いた。

瀧澤 延匡(株式会社上野振興公社 常務取締役)

産業振興と雇用促進で
村民の3割が移住者に

群馬県最西南端に位置し、人口1100人余りと県内では最小人口の上野村。森林が総面積の95%を占める典型的な山間の村だ。利根川源流の一つで、「平成の名水百選」に選ばれた神流川が流れるなど、豊かな自然が残る。平成の市町村大合併の時に「合併しない宣言」をし、多くの過疎地と同様の課題を抱えながらも自立の道を歩み続け、今や人口の3割をU・Iターン者が占めている。

「若い移住者が増えている背景には、行政と民間が連携して主体的に産業振興と雇用促進を両輪として進めてきたことがあります。耕作地の少ない農山村という厳しい条件ながらも、椎茸栽培、イノブタや十石味噌の生産、観光業などを基幹産業へ成長させました」と上野振興公社の瀧澤延匡常務は語る。

上野村は近年、エネルギーの地産地消を目指し、バイオマス発電所を建設。間伐材を利用した木質ペレットを燃料に発電し、その電気と排熱を隣接する観光施設「きのこセンター」に供給するなど、村内循環型社会の構築にも取り組んできた。こうした施策が奏功し、上野村ではI・Uターン者が村づくりの様々な場面で活躍している。村の観光振興を担う上野振興公社でも移住者を積極採用しており、社員20名のうち17名が移住者だ。

「能力やスキルの高さを採用基準にしていた時期もありましたが、辿り着いたのは、多様性のある人材を採用し、彼らの能力を最大限に引き出して企業の力にすればいい、という考え方でした」と瀧澤氏。自身も、もともと興味があった「地域資源を活用したビジネス」に取り組むため、2006年に埼玉県から移住したIターン者の一人だ。

「自然豊かな上野村に職を求める方々は様々なバックボーンをお持ちですが、当社には都会の生活に疲れてしまった人や、心に傷を負って社会から一度引いてしまった人などの応募が増えています。都会では必ずしも尊重されてこなかった彼らの個性を従業員同士が認め合うことで、多様な人が生きがいや幸せを感じられるウェルビーイングな企業でありたいと思っています」

瀧澤氏はこれを「上野村型ダイバーシティ」と名付け、従業員の定着と事業の好循環を生み出し、地域の持続可能な成長を下支えしていきたいという。

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