地域と若者を結び、関係人口創出に貢献する「おてつたび」

人手不足に悩む地方の自治体や事業者と、旅先でユニークな経験を求める旅行者をマッチングするサービス「おてつたび」が急成長を遂げている。受け入れ先が参加者の増加に追い付かず、現在、応募倍率は3倍~5倍。創業者の永岡里菜氏にサービス立ち上げの背景と現状を聞いた。

2018年7月の創業から3年弱で、全国47都道府県のうち、45の都道府県で事業を展開しているベンチャー企業、おてつたび。今年に入ってからも、広島県の竹原市・三原市・尾道市の3市とJR西日本が締結した関係人口創出に関する協定「せとうちファンづくり協定」の事業パートナーとなったほか、市原DMO(市原市観光協会)とも連携し、いちはらファン創出に向けた実証実験を開始するなど、地方自治体から熱い視線を向けられている。

都市と地方の分断を埋める

同社の事業は、「お手伝い」と「旅」を掛け合わせた社名に表れている。人手不足に悩む地方の事業者と、旅先でのユニークな体験を求める旅行者をマッチング。事業者は報酬と宿泊場所を用意し、旅行者は旅先でお手伝いをして報酬を受け取り、滞在費や交通費を安く抑えながら現地を楽しむというサービスだ。

「自分の居住地と出身地以外に好きでたまらない地域を誰もが3、4個持てた時に、もっと地域との距離感や、都市と地方の分断というのはなくなっていくのではと考えています。お手伝いという共同作業を通じて、地域や地域事業者さんの応援団やファンを作りたいのです」と語るのは、27歳の時におてつたびを立ち上げた永岡氏。千葉大学の教育学部卒で、「もともと小学校の先生になりたかった」という若者が、なぜ起業家になったのだろうか?

永岡 里菜(おてつたび 代表取締役CEO)

「3年間は民間で修行してからと考えて、新卒でプロモーション系、PR系が強い企画制作会社に入りました。その後転職し、1次産業や地域活性化をサポートする職に就きました。その仕事で全国を飛び回ることが多かったのですが、どこそれ?と言われるような地域こそ、面白いと感じました。でも、日本中にあるそういった地域がそれぞれブランディングして差別化するのは極めて難易度が高い。足を踏み入れて初めて魅力がわかるような地域に人が来て、ファンになって帰る仕組みを作りたいと思って、起業しました」

永岡氏の出身地は三重県尾鷲市。人に話すとよく、「どこ?」と言われてきた。しかし、自身は故郷が好きで、素敵な場所だと思っている。尾鷲市のような知名度は低いが魅力ある地域にどうすれば人が来て、何度も通ってもらえるのかと考えて生み出したのが、お手伝いと旅を掛け合わせた仕組みだ。

お手伝い先に移住する学生も

今では自治体や事業者から引っ張りだこの「おてつたび」だが、起業当初から順風満帆だったわけではない。このマッチングサービスを始めるためには、まず、旅行者を受け入れる事業者が必要だ。永岡氏は協力してくれる事業者を探してあちこちで説明を繰り返したものの、「あなたの思いには共感するけれど、誰が来るかわからないから怖い」と拒否されることがほとんどだった。永岡氏は「最初の実績作りや信頼関係を構築していくところが一番大変だった」と振り返る。そこで根気よく説明を続けていく過程で、宿泊場所を提供しやすい旅館などの宿を中心に1軒、2軒と理解してくれる事業者が現れた。

全文を読むには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り57%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全文読むことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。